ニッケイ新聞 2008年8月16日付け
きのう15日は「終戦記念日」である。東京の日本武道館では、天皇、皇后両陛下も参列し遺族らと全国戦没者追悼式を開き、不戦を誓った。あの戦争で日本は、陸海軍の兵士ら230万人が散華し、空襲などによって80万人の民間人が犠牲になっている。米の軍人戦没者は30万人であり、この数字を見ただけでも、日本の完全な敗北であった▼あれから63年―。今は景気があまりよくないし、バブル崩壊もあったけれども、灰燼から立ち上がり復興に努め経済大国になった奇跡?はもっと評価されていい。中国製の餃子に毒が混入されているとかで大騒ぎするのは当然としても、戦後の食糧難と混乱を思えば、天国で暮らしているようなものという認識も欲しい▼山の緑も美しい。焼夷弾による空からの攻撃で東京を始め福井などの町は住宅が燃え尽きたが、青々とした森は今も茂っている。戦中や戦後に乱伐の危機もあったし、太い樹木も少ない。あの薬師寺の東塔、西塔を再建した宮大工棟梁の故西岡常一さんは、塔の柱になるヒノキが、日本にはもうないと知る▼薬師寺が建築から千三百年すぎてもしっかりしているのは、樹齢が千年を超すヒノキを使っているからだが、そんなものは日本にはない。ところが、台湾には2千年のヒノキがあり、西岡棟梁は買い求めて輸入に踏み切ったと、書いている。と、情けない話もあるが、これから10世紀も後の木曾には、堂々としたヒノキの巨木が並び寺院の再建も大丈夫になると信じたい。戦後の63年は、こんな国の礎を築くー苦と楽の歳月でもあった。 (遯)