ニッケイ新聞 2008年8月23日付け
リオ市で起きた市民七人殺害事件に、警官五人を含む一七人が関与と二十二日伯字紙が報じた。
事件発生は十九日夜~二十日朝で、西部のファヴェーラ・バルバンテの住民七人が殺された。ミリシアと呼ばれる、警官や消防士、犯罪者による組織によるもので、首謀者で実行犯の一人は、同地区を支配するミリシア「リーガ・ダ・ジュスチッサ」の首領として逮捕された市会議員の息子だという。
事件担当の警部は、犯行は地域にはミリシアが不可欠と考えさせるためで、首領逮捕後に影響力を失った近くのファヴェーラ・カロビーニャに入ってきた麻薬密売組織に対抗する意味もあったと見ている。
ミリシアや密売組織の存在はファヴェーラでは無視できず、プロヴィデンシア丘の青年惨殺事件関与の軍人らも、犯罪組織関係者とつながりがあったという。生まれた時から犯罪組織が身近にあり、勢力争いの様子も知っているファヴェーラ住民だが、首領逮捕後のリーガ・ダ・ジュスチッサ勢力域での殺人は五一%、殺害後の遺体遺棄は三八%減少。ミリシア議会調査委員長は「ミリシアはリオにとって最大の脅威」ともいう。
また、逮捕中の市議の娘は市議選候補で、選挙に圧力をかけるための事件との見方もあるが、娘は事件への関与を否定し、政治的迫害と弁明。
他方、事件関与者には軍警三人、市警二人、消防士一人が含まれ、拘留中の市議も退役市警。弟でやはり逮捕された州議も元市警で、市議の息子は、地域の担当警察署長殺害を指示したと七月二十六日エスタード紙が報じた人物でもある。
二十二日エスタード紙によれば、プロヴィデンシア丘プロジェクト立案者のクリヴェーラ市長候補が、同丘での軍人起用は安全確保のためで、青年惨殺事件は上官命令に不服従の軍人が起こしたと弁明。当選すれば、治安維持のための軍派遣要請も積極的に考えるという。また、同日アゴーラ紙には、選挙高等裁判所が選挙戦での治安確保のために軍派遣を正式に要請とも報じている。
一四年ワールド・カップ競技地の一つで、一六年のオリンピック招致にも積極的なリオ市。ベトナム外交官も巻き込む誘拐事件発生で治安不安の報も流れた後だが、治安対策は大丈夫だろうか。