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サンパウロ市とブラジルの文化の殿堂=メインホール焼失後1週間=同じ場所に再建目指す

ニッケイ新聞 2008年8月26日付け

 十七日未明の火事でメインホールと二点の絵画を消失したサンパウロ市芸術文化劇場(二十日本紙一部既報)は、近代化した劇場を現在地に再建する方向で歩み出した。
 一九五〇年に巨匠ヴィラ・ローボスの演奏で落成式が行なわれた同劇場は、一九一二年に芸術文化社会団体発足以来、音楽に深い造詣を持つメンバーの夢をつないで建設されたもので、音楽や劇の上演などで幅広く用いられて来た。多くのファンから、当時の建築の粋を尽くした劇場の再建を危惧する声もあった。
 十九日フォーリャ紙によれば、十八日も壁面温度が五〇~六〇度だった同劇場は、火災時には八〇〇度の高温になったと考えられ、壁面温度が下がれば、崩壊の危険が増すとみられていた。
 その後、火災による損傷は小さかったジ・カヴァルカンチのモザイク画倒壊の危険を案ずる声などもあがったが、現時点では、モザイク画倒壊の危険はないとの見解が出た一方、劇場そのものは、創設当時の構想を保ちながら、施設増設も含めた近代化を行い、伝統と近代建築の統合を目指す方針が発表された。
 新しい劇場については二十日エスタード紙が報じているが、同紙は、消防法の基準は満たしていたといわれた劇場が、五月に行われた現代建築を学ぶ学生の論文作製のための視察では、剥き出しの電線、壁の湿気、コンクリート劣化などの問題点が二〇〇点の写真で指摘されていたとも報道。学生は結果を指導教授に提出するとともに、芸術文化社会団体にも報告したが、団体側は何の興味も示さなかったという。
 この点について、二十四日フォーリャ紙に、同劇場に対する消防法基準は一九八三年作成版で、不十分であること、煙感知器の感度がもっと高ければ、これほど大きな損害は受けずに済んだことなどが報じられている。消防法審査は、建造年によって適用基準が違い、同劇場は古い基準によって審査されていたことになるが、それでも、非常口の広さや数などの問題もあったようだ。
 火事で焼失した二台のピアノの替わりにと、篤志家からのピアノの寄贈も約束された同劇場だが、最高の芸術を最高の場で演出し、楽しんでもらえるためにも、新しい劇場には、音響設備以外にも、新消防法に沿った安全で快適な建築が求められている。