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サンパウロ州で今も続く奴隷労働=サトウキビ収穫をめぐる抗争=アルコール躍進の陰に死も

ニッケイ新聞 2008年8月27日付け

 二十六日フォーリャ紙に、地面に押さえつけられた青年や、銃を手に取り巻く警官の写真。サンパウロ州サトウキビ労働者のスト中に起きた二度目の衝突の様子を伝えるものだ。
 国内のサトウキビ生産の六〇%を占めるサンパウロ州での労働者スト開始から一週間。砂糖アルコール業界は二十二日に、労働者のバス運行阻止を禁ずる裁判所の仮処分を得たが、これを不服に思う労働者らは労働者組合前に集結。基本給一〇%引上げと収穫量毎の報酬(畝一メートル当たり八~一三センターボ)の二〇センターボへの引上げ要求中の労働者らの抗議行動は、三人逮捕、六人負傷の事態にまで及んだ。
 二〇一四年までに収穫の完全機械化を目指すサトウキビ栽培では、機械より高くつく人件費は安く抑えたいところ。大躍進の砂糖アルコール業界の収益は収穫労働者にまで届いていない状態だ。
 二十日フォーリャ紙によれば、サトウキビ労働者の日給は、一九八五年の三二・七レアルから二〇〇七年の二八・九レアルと減額。一方、一人当たりの一日の平均収穫量は、同時期に五トンから九・三トンに増加している。
 この一人当たりの収穫量増加は、労働者が休憩時間を削って勝ち取ったもの。そのため、過労死、身体を壊した労働者、鎮痛や労働効率を上げるための麻薬常用などの問題も引起こした。
 また、労働者の文盲を悪用し日当を少なく払う雇用者や、防具も提供せずに働かせる、劣悪な条件の住居など、奴隷労働にあたるケースも多い。
 最新技術を集約した工場や、大統領も英雄扱いする業界の陰に、サンパウロ州では家族収入が二最低賃金以下の労働者が八一%という実態や、この分野の黒人や黒人系労働者が人口比や農業全体の構成比より各々七六%、五四%増の四九%(全伯では四三・四%、五五%に対し六三・七%)と多い、平均就学年数は三・七年などの事実をどれだけの人が知っているだろうか。
 夜明け前から働く父親を見慣れず、父親が怖いと泣き出す子や、奴隷労働から解放のニュースも読めない労働者。日々の糧を得るために働く労働者にはスト実行者の考えがわからないのか、スト参加率も低いという。
 日々の糧のために奴隷労働に追われ、将来の失職の恐怖に悩む人々。サトウキビ栽培だけを見ても、社会の歪みはなかなかなくなりそうもない。