ニッケイ新聞 2008年8月28日付け
ヴィラ・カロンで二十三日にあった「第六回オキナワ祭り」。山羊汁で腹ごしらえ、三線の調べを聞きながら、会場の散策を楽しんだ▼ビール片手にーといきたいところだが、当日は相当の冷え込み。背中を丸めて歩いていると自家製泡盛を無料提供する粋人が。口に含むと、鼻腔に抜けるあの独特の甘味を楽しめた。当の本人「百年間、誰も作らないから、私が始めたんですよ」と破顔一笑▼コロニアが生んだ酒類といえば、東麒麟がつとに有名だが、戦前にはリベイロン・ピーレスの「桜錦水」を嚆矢に、「日乃華」(グァララペス)、「富士桜」(マリリア)など地酒が百花繚乱。しかし焼酎の類が生産された話は寡聞にして知らない。マンジョッカ焼酎が気を吐くのも最近の話。九州からの移民も多いのに何故―とかねてからの疑問だった。醸造と蒸留の技術の問題だろうか▼先日サンパウロ市であった移民研究報告で「他県民と比べ沖縄県移民の定住率は著しく低かった」との発表があったという。根を張らねば酒も造れまい。転耕を繰り返し、同じく蒸留酒のピンガで郷愁を紛らわせたのだろうが、戦前から県系集団移住地だったカンポ・グランデにもないというのだから、謎は深まるばかり。単純にピンガで用が足りたのか▼さて。山羊汁、沖縄ソバに定番なのが、島唐辛子を泡盛に漬け込んだ調味料コーレーグース。これも当地ではピンガで代用するが一説には、ハワイの沖縄移民が、他国の移民と食を分け合ったいわゆる「ミックスプレート」のなかで知ったピメンタが起源というから面白い。ともあれ、ブラジル産泡盛が手軽に飲めるようになって欲しいものだ。 (剛)