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アウト・チエテ=統合フォーラム=地域の共通問題を討議(下)=日本移民史は国家の財産=「我々世代の責任重い」

ニッケイ新聞 2008年9月6日付け

 サンパウロ大学(USP)歴史学教授パウロ・グラセス・マリンスさんが「日伯建築資産の保全」をテーマに講演、「二〇〇五年にレバノン人移住百二十五周年があったが、今年の百周年とは比べ物にならなかった。私自身この四十年間の人生で、この種のイベントでこれほどインパクトのあるものはなかった」と百周年を振り返った。
 「日本移民移住は、それほどブラジル人の琴線に触れる何かがあった」とし、「日本移民の記録は、国家財産としてブラジル人全体が残していくべき」との考えを示した。
 リベルダーデに関しても「アジアでは中国人、韓国人と複雑な歴史をもつ日本人もここでは平和に共存している。そしてレバノン人やロシア人の教会、ドイツ人の施設などもある多文化地区」とする。
 多国籍な移民はもちろん、ブラジルにはミナス州人、リオ州人、バイーア州人など多彩な地方文化があり、多文化が特徴。「決まったブラジル人はいない。つねに歴史の中で再構成されたブラジル人に生まれ変わっている。どんな文化的な相違も敬意をもって扱われねばならない」との考えを示した。
 さらに州政府の文化財指定を受けているのがアルバレス・マッシャード日本人墓地(一九八〇年)、モジ市コクエイラ区のカザロン・ド・シャー(一九八二年)、レジストロのKKKK(一九八七年)の三カ所であり、なかでもカザロン・ド・シャーは連邦文化遺産に指定されていると説明。
 「シリオ・リバネースもイスラム系、イタリア人ですら連邦の指定を受けた建物はない。民族系で唯一の指定を受けている貴重な存在」と位置付ける。「古い建物に新しい役割を与え、現在に見合った活用方法を考える発想が重要」と提案した。「あと五百年経ったら笠戸丸ははるか遠くのものになる。今、将来に何が残せるか。我々の世代の責任は重い」。
 続いて、安部順二モジ市長が講演し、「昔は日系コミュニティが代表者を必要としていたから、票まとめが現在より容易だった。今は混血が進み、日系人の代表でなくてもいいという人が増えているから、選挙活動は難しい」と嘆きつつも、「どんなに混血が進んでも〃カーラ・ジャポネース〃は残るから、先祖から受けついた勤勉さ、誠実さなどの伝統を残さなくてはいけない」と熱弁を振るった。
 この伝統を一般社会に広めることがこれからの日系人の役目と考えている。「倫理、道徳ある市民を育てる取り組みが重要」と訴え、そのためにも「日系の政治家を引き続き政界に送る必要がある」と強調した。
 百周年を記念して市百周年実行委員会がヅッツラ街道に大鳥居を作ったが、それに対し、エバンジェリコの神父ら五人が「鳥居は神道だから、我々エバンジェリコはその下を通るわけには行かない」と抗議にきたという。安部市長は「ブラジルにおいて鳥居は脱宗教色を強め、すでにツーリズモ的な存在である」と考えているとのべた。
 最近のIBOP調査で、同市長を支持する市民が七八%にも達したことを紹介し、「日系人として誇りに感じる」と胸を張った。
 最後に、ブラジル日本文化福祉協会の山下ジョルジ副会長は「十一月にブラジリアで第二回全伯統合フォーラムを予定している。地域ごとにこのような取り組みをお願いしたい」とのべた。 (終わり)