ニッケイ新聞 2008年9月9日付け
児童趣味や性的虐待の問題が深刻なブラジルだが、七日エスタード紙が、アマゾンの黄金郷で、性の氾濫と報じた。
問題の黄金郷はアマゾナス州コアリとパラー州ジュルチー、パラウアペバスの各市。天然ガスや石油、鉄鉱業で急成長中だが、Valeやペトロブラス(PB)、Alcoaの進出以来、経済的に潤う反面、様々な社会的問題も噴出している。
一例として一五歳以下の妊娠率をみると、全国平均の一・三%が、アマゾナス州やパラー州では一・九%、コアリでは一三・九%(コアリでもPB進出一年前の一九九五年は一・七%だった)。
また、同市での一七歳以下の出産は、二〇〇七年が二八〇件、二〇〇八年上半期が一七六件で同期間中の流産、中絶も二〇件。一方、〇八年上半期のパラウアペバスでの一五歳以下の妊娠は二%。ジュルチーでの〇七年の一五歳以下の妊娠は、九五年の〇・九%から二・五%に上昇した。
さらに、コアリの好況を見て移住した人たちが住む地域では、六〇人の妊婦中二二人が一七歳以下。市中央の保健所でも、三七人の妊婦中一二人が一七歳以下。どちらの保健所でも、企業進出以来、若年層の妊娠が増えたという。同市で〇七年に九歳での妊娠二件、〇八年上半期も一二歳の産婦も二人いる。
また、多国籍企業制服がステータスシンボルとなる同市で、制服や名札をつけた客があふれる売春宿やバールは、麻薬売買の場所でもある。携帯電話で呼び出されると専門のバイクで客の所に行くという少女は、売春で得た金で麻薬を購入する一方、生活扶助を受けている母親に食料購入のための金を渡してもいる。
石油や鉄鋼業などのロイヤリティで潤う町は住民一人あたりの収入は高いが、教育やスポーツ振興などの社会的プログラムもなく、手に職も持たない住民には売春などの他に収入を得る道もない。また、為政者の手で資金浄化など、町の問題は深刻化の一面も。
五月十八日フォーリャ紙も経済活性化計画工事で人が増える地域で性的暴行急増と報じたが、アマゾン地域は、一九七〇年代のトランスアマゾニア(幹線道路)建設期にも同様の問題が発生。当時を記憶する人も多いはずの地域で、幹線道開通から三四年経つ今、同じ過ちが繰返されている事を人間の性として見過ごすことは許されない。