ニッケイ新聞 2008年9月10日付け
ルーラ大統領とキルチネル亜大統領は八日、レアル通貨とペソ通貨を両国の通商でドル通貨に替わる共通通貨とすることに合意と九日付けエスタード紙が報じた。実施は十月三日、通貨の選択は自由。これで輸出業者は産物を地元の通貨で決済でき、ドル変動に振り回される心配がなくなった。
通貨の選択は自由でありドル決済を希望するなら、それも可能。それは輸出契約を締結し、輸出許可証(ギア・デ・エスポルタソン)を発行する時点で決める。
利点は、輸出価格が現地通貨のため、為替変動で左右されないし、ヘッジ(為替差損)取引も不要なこと。特に小零細企業には、不確定要因が排除されるので有利だ。
現地通貨取引(SML)では、ドル通貨の売買で払わされたスプレッド(利ざや)が不要になるので、そのために要した四%の手数料はなくなる。ドル通貨の売買価格は買いが売りより高く設定され、外国為替銀行を儲けさせている。
現地通貨取引だからと、銀行の介在がなくなるわけではない。ただドル通貨取引のような銀行の暴利は、許されなくなる。しかし、それは協定が保障するものではなく、取引をする本人が注意するべきもの。
伯亜両国が通貨協定を締結しても通貨の選択は自由であるから、大手商社は従来通りのドル決済を要求すると思われる。ドルは鯛と同じで、腐っても鯛だ。ドルが何時紙くずになるかは、本人の判断によること。
通貨協定が実施されても、当初のSMLは一〇%から三〇%程度と推定される。メルコスール共通通貨は飽くまで未来通貨。現在は胎内で受精した通貨に過ぎない。EU共通通貨にしても、発案から五十年の歳月を経て誕生に至っている。
伯亜両国は、技術協定も結んだ。亜造船工業が、岩塩下油田の採油機器とプラットフォーム、震度計、油送船の納入で出資する。亜造船所の近代化と設備投資は、ブラジルが行う。これは、事実上のブラジルによる亜造船所買収という。
伯亜両国は、ガナビ水力発電所の建設計画やウルグアイ川の橋梁建設でトントン拍子に話が進んだが、ドーハ・ラウンドでは口をつぐんだ。ブラジルのペースについて行けないという。