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ヤマモト・ロザリオ=〃華麗なる〃詐欺人生(下)=牧師の妻も奪った!?=偽名刺で日系社会もだます

ニッケイ新聞 2008年9月12日付け

 〃詐欺師ヤマモト〃を逮捕したフレデリコ署長によれば、ヤマモト容疑者にはサンパウロ州サントス市で知り合った五十代の日系人の妻がいる。ブラジルで詐欺を始めた二十代のころだ。
 容疑者と知り合う前、この女性は、すでにブラジル人牧師と結婚していた、とフレデリコ署長。どのようにして彼女を〃奪った〃のかはわからない。その巧みな話術だろうか。妻以外にも、牧師の車、家、教会の財産も詐欺で奪ったという。加えて現在、サンパウロ市東部に三十代のブラジル女性の愛人がいるという。ヤマモト容疑者には正妻との間に子どもがいるが、すでに成人。そして、この愛人にも男の子がいるとされる。
 容疑者は近年、詐欺をするにあたり、架空の日系団体の名刺をつかった。その名刺には「CENTRO CULTURAL NIKKEY DO BRASIL X JAPAO」とある。強いて訳せば「日本ブラジル日系文化センター」か。名刺の名前は「YAMAMOTO」と苗字のみあるのが妙だ。
 記されている住所は文協ビル近くのタマンダレー街。しかし、その住所は実在しない。容疑者の本当の自宅はサンパウロ州イタクアケセツーバ市内にあるという。
 名刺に記載された二つの携帯電話番号は本当のものだという。記者が試しにかけてみたが不通だった。
 ヤマモト容疑者が逮捕されたのは、実は今回を含めて五回目。一九七七年、八〇年、八四年、二〇〇四年、そして〇八年。このうち八〇年の逮捕時に、二年間の禁固刑に服している。しかし、これに懲りず、出所後すぐに詐欺生活にもどった。
 供述によれば、これまでに働いた詐欺は二千五百件にも及ぶ。近年では、移民百周年を利用して、サンパウロ市セアザの日系人を訪ね、「皇太子殿下が出席なさる昼食会に参加する費用に」と百レアルほどをだまし取っていたほか、「グアルーリョスに日本公園をつくる」として、寄付金を集めていた。
 なぜ被害が多い割に逮捕が遅れるのか――。
 その質問に対し、フレデリコ署長は「被害者もだまされたことを恥ずかしく思って警察になかなか連絡してこない。それに面倒に感じているようだ」と分析する。主な被害額は百から二百レアルほど。それならば、被害者も仕方ないと思うのかもしれない。
 今回、被害者の通報をもとに、当局は逮捕一カ月ほど前から容疑者を追跡。そして先月十四日、サンパウロ市東部ヴィラ・リッカ区のバレイラ・グランデ街道を歩いているところを拘束した。
 今回の逮捕に関して「すでに公判手続きが進んでいる」とフレデリコ署長。「ヤマモトは五年の禁固刑を受けても当然だ」と話す。これは詐欺罪の最大禁固刑という。なお、最低は禁固一年。
 警察の取り調べに対し、「詐欺で稼ぐのは簡単だから」と答えたというヤマモト容疑者。フレデリコ署長は、「彼は詐欺を自分の仕事として愛し、天職と感じていたようだ」と締めくくった。
 この供述内容自体が〃詐欺〃ということはないだろうが、「月の土地」まで売った詐欺師は少ないだろう。(おわり、池田泰久記者)