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米危機で何が変わる=実体経済から金融経済へ

ニッケイ新聞 2008年9月16日付け

 今ブラジルに襲いかかっている高波は、経済システムに三つの変化を余儀なくさせる。それは通貨政策と食糧政策、そしてエネルギー政策だとル・モンド・ディプロマチッケ誌九月号が報じた。
 米金融危機の歪は七〇年代から始まり、長い時間をかけながら資本主義構造を蝕んだ。こんな歴史観を持たない人に、米金融危機の本質は分からない。米金融危機がブラジルに何をもたらすか、結果として経済がどうなるのかが分からない。
 資本主義は再生する性質上、長短のサイクルをつなぎながら生きてきた。資本主義の黄金時代は戦後、日米欧で花を咲かせた時だった。
 一方、社会主義は、ブラジルやアルゼンチン、メキシコなどの地域経済で依存関係を保ちながら成長した。この時点では、資本主義の欠陥が見えなかった。しかし、新しいサイクルを繰り返すうちに矛盾が見えた。
 資本主義を長いサイクルで見ると、大資本の大企業が、食糧と金融、需要、供給、さらに政府の管理政策をも支配した。生産過剰や消費減退という現象が発生すると、資本主義の構造は均衡を崩すことが分かった。
 大企業は、組織が大きすぎるため生産調整や富の再分配ができないのだ。第二次大戦後、長期サイクルの平和が続き、金余り現象が起きた。この資金が、ブラジルなどの途上国へ流れた。
 これまでの経済サイクルを、ブラジルで繰り返しただけなのだ。軍政時代は丁度、資本主義の拡大サイクルに合流し、縮小サイクルで軍政に終止符を打ったのだ。
 ルーラ政権にも、拡大と縮小のサイクルがある。これは旧サイクルの終わりと新サイクルの過渡期なのだ。現在ブラジルに迫っている米発金融危機の高波は、実体経済から金融経済へ資金を移動する過渡期だ。
 この変化は、ブラジルの経済活動を惑わせる。ブラジル経済が金融経済に舵を取ると、大きな資金が動き、莫大な利益が上がる。しかし、政府に入る税金は僅かで、所得格差をつくる。中銀は、その水先案内だ。