国連報告書=法廷外処罰を看過=殺人を副業とする警察官
ニッケイ新聞 2008年9月17日付け
国連は十五日、ブラジルの治安政策を批判する報告書を発表と十六日付けフォーリャ紙が報じた。報告書によれば、警察官暴力の法廷外処罰が常套、政府は看過している。それで世界でも殺害による死亡率の高い国となっているという。
報告書を作成した国連査察官は、二〇〇七年にスラム街や刑務所を視察。結論として警察暴力が、州政府や一部市民から黙認されているとした。特に注目したのは、投降の意志を表明した者に対する処刑だ。
殺害は犯罪の取り締まりにならないし、治安政策としても容認されないものと強調。法廷外処罰は、ブラジルの一部でまだ続行されている。殺人の陰には、警察官の関与が認められる。殺人請負を休暇日の副業としたり、ミリシアと呼ばれる暴力団組織の一員となったりする警察官も多い。
ブラジルからの報告書では、殺人件数は年々減少している。しかし、警察官の射殺が、殺人の多くを占めるようになった。リオ州では、警察官が一日に三人を射殺。市民は警察暴力に対し不感症のようだ。市民の大部分は、治安維持法が欠陥法だからという。
薄給を補うため副業として請負殺人や暴力団組織の一員となった警察官の多くは、手入れのドサクサに紛れて注文の人物を殺害し、業務執行妨害で葬る。リオ市とサンパウロ市では殺人で起訴されるのは、一〇%に過ぎない。
リオ市には、約五百のスラム街がある。その中に九十二の暴力団組織がある。暴力団メンバーの殆どは、警察官や元警察官、刑務所元職員なのだ。これらメンバーが、治安当局に替わって縄張りを治める十手預かりの仕組みだという。
国連の見方では、軍警と市警、監察局、法医学研究所、聴聞局、検察局、刑務所管理局、裁判所がグルになっているので、全面改革は無理でも、できる範囲での改革は急務としている。