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パラナ商議所30周年祝う=クリチーバ=日伯経済シンポに全伯から=環境ビジネスやデジタル=SC州にも新団体創設へ

ニッケイ新聞 2008年9月23日付け

 パラナ日伯商工会議所(上野アントニオ会頭)が三十周年を迎えたことを記念して十九日午後、同州都クリチーバ市の兵庫姫路会館で「第十七回日伯経済シンポジウム」が開催された。島内憲駐伯大使をはじめ、全伯の日系商議所代表ら約二百人が集まり、環境ビジネス、デジタルTVの最新事情や、JICA、JETROなどの支援業務などに熱心に耳を傾けた。上野会頭が今年いっぱいで公職引退を公言していることから、惜しむ声があちこちから聞かれた。
 開会式では市長代理として原ルイ総務局長があいさつし、同商議所が中心となって皇室との関係、経済交流を推進してきた歴史を顕彰し、上野会頭の業績を称えた。
 副知事代理のイデイヴァウテル・ゴメス・デ・カルバーリョ氏も「日系社会との関係において常に扉は開いている」と歓迎した。
 シンポ開幕講演で、皇太子殿下のご来伯の意義を「百周年のハイライト」と振り返った島内大使は、「日伯関係が新しい段階に入った」と分析し、エタノールへの投資、デジタルTVの日伯方式採用の次は、高速鉄道網の新幹線方式採用の働きかけが優先課題であり、「クリチーバにも伸びる計画がある」と語ると大きな拍手が沸いた。
 続いてJETROサンパウロの原宏次長がブラジル製品を日本に輸出するための支援業務を紹介。
 ブラジル三井住友銀行の内田肇地球環境部長は、全伯各地での十数件の小・中規模のクリーン開発メカニズム・プロジェクトから創出される排出権をまとめ、日本の購入者に紹介する新ビジネスモデルを練り上げてきた経緯を説明し、「多国籍企業の中にはブラジルから利益を持ち出すだけの発想のビジネスもあるが、我々はそれに荷担しない」と語ると、席をたって熱烈に拍手するブラジル人ビジネスマンもいた。
 同銀行のこの取り組みは、英フィナンシャルタイムズなどが実施し、持続可能な社会への銀行の取り組みを評価する〇七年度サステナブル・バンキング賞の優秀賞(runner‐up)に選ばれている。
 同州エタノール砂糖生産者協会(Alcopar)のアニジオ・テルメラ会長は、アマゾンを破壊せずとも生産を倍増する余力があると説明をした。
 サンパウロ市の商議所を代表して日伯経済交流について講演した同三井住友銀行の窪田敏朗社長は、「日本から進出を希望する企業三十社からの相談を受けている」と明かし、関心が高まっている現状を説明。大油田発見、米国への輸出依存度減少などのブラジル経済安定要因を分析し、「資源や食料など日本にとって不安な部分に応えてくれる数少ない国」と評価し、相互補完関係を強調した。
 デジタルTV関係ではプリモテック21社の古瀬耕介営業部長が、日伯方式の優位性と創出される事業機会を具体的に説明した。
 JICAサンパウロの千坂平通支所長は、十月のJBICとの合併および事業内容などを説明。
 最後に上野会頭は、訪日経済視察団に関して「計五百二十五人の企業家を三十五回にわたって日本に連れて行った」と熱く語り、「日伯関係振興が私の生きがいだ」とし、その想いの源泉は「皇室への崇拝と日本への憧れだ」と締めくくった。八十六歳を迎えたので公職は退き、サンパウロ市の子息リカルド氏らと生活し、「自伝を執筆する」という。
 当日はリオ、サンパウロ市、ポルト・アレグレ、マナウス、ベレンの日系商議所からも参加者が集まった。三人がきたマナウス商議所のアシベ・ユキオ副会頭は「三十周年を祝福したい。興味深い講演内容ばかりだった」との感想をのべた。これを機に、サンタカタリーナ州にも日系商議所を立ち上げる話も出てきた。
 三十周年記念の一環として、今シンポジウムで講演した一行は翌日、同州フォス・ド・イグアス市に場所を移し、地元企業家らを集めて日伯経済懇談会を行い、親交を深めた。