ニッケイ新聞 2008年9月24日付け
早稲田大学グリークラブのブラジル訪問団(大泊巌団長、団員三十七人)は、カンピーナス大学、サンパウロ大学、リベイロン・プレットでの交流・演奏会を終え、二十一日SESCピニェイロスでサンパウロ州最後となるサンパウロ市公演を行った。約六百人が日伯友好の美声に聞き惚れ、万雷の拍手を送った。
白いブレザー姿でステージに立ったメンバーらは、日伯両国歌、早大校歌、民謡「最上川舟歌」や「見上げてごらん夜空の星を」などを次々に披露、素晴らしいハーモニーを響かせた。
続いて、ポルトガル語でピシンギーニャの「Carinhoso」、ルイス・ゴンザガの「Asa Branca」を歌い、会場からは「ブラボー!」の歓声も上がり、一際大きな拍手が送られた。
「赤とんぼ」「夕焼け小焼け」など抒情歌メドレーは、移民や日系人が中心だった観客に静かな感動を呼び、目頭を押さえる人の姿も見られた。
軽快なピアノの伴奏とともにジョルジ・ベンジョールの「Mas que nada」で会場は一転華やいだ雰囲気に包まれ、会場も総立ちになって拍手を送った。
公演の終盤、メンバーらは観客席の通路に立ち、同クラブOBで作曲家の故磯部俶氏による「遥かな友に」をしっとりと聞かせ、会場に感動が広がった。
この曲は、同クラブの合宿に参加できなかった貧しい学生に寄せて五一年に作られたとされ、愛する人と離れた移民の心情と重ね、今回の公演のために練習を重ねたという。
アンコールの嵐は止まず、公演が行われた会場前のホールでも早大応援歌などが披露され、メンバーを囲んだ人の輪ができた。
石岡紳一郎さん(41、九一年卒)は、「やはり懐かしい。まさかブラジルで母校の校歌や応援歌を聞けるなんて」と後輩の姿を見守っていた。
コーラスをやっているという二宮せつこさん(53、二世)は、「知っている曲もあり、とても良かった。感激です」と興奮した面持ちを見せた。
「マラヴィリョーゾ!」と連発するエドゥワルド・ポカルデさん(55)は、「彼らの歌を聞き、何度も涙ぐんでしまったよ。ポルトガル語の発音も良かった。ムイント・ボン!」と大絶賛。
公演後にメンバーの手を握り、感動を伝えた斎藤晴美さん(67、二世)は、「難しいブラジル国歌の歌詞まで覚えてよく練習されたと思います。やはり日本の歌はいいですね」と目を赤く腫らせながら、話していた。
丹治亮部長(23)は、「日本では経験のないスタンディング・オベーションを全ての公演でしてもらった。ブラジルが益々好きになった」と話し、日本側と比べてブラジル側の百周年の盛り上がりに驚きながら、「この公演が日伯交流に役立てたら嬉しいし、帰国後も何かお手伝いできれば」と話していた。
大泊巌団長(67、六五年卒)は、「涙を流される方がいるなど、非常に高い感性を感じたし、反応が素晴らしく良かった」公演の感想を述べ、嬉しそうな表情を見せた。
ブラジル稲門会の会長でコーディネーターとして奔走した相田祐弘さん(76、五四年卒)は、「良かった。成功しました」と話し、安堵の表情を見せていた。
メンバーらは二十三日リオデジャネイロ連邦大学でも交流・演奏会を行っている。