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琉球大学移民センター百周年記念シンポ=移民百周年とウチナーンチュ(下)=世界でルーツ意識を共有=ブラジル県系は世界で1位

ニッケイ新聞 2008年9月25日付け

グローバル網の形成

 金城宏幸教授は「21世紀のウチナーンチュとグローバル・ネットワーク」と題して、移民と沖縄の繋がりの深さを語った。一九〇〇年にハワイに上陸した二十六人に始まり、戦前には県民の十人に一人が海外に在住。
 ブラジルでは全日系人の一〇%だがペルーやアルゼンチンでは七割、ボリビアでも六割を占め、「むしろ多数派になっている」と移民社会の独自性を強調した。
 在外同胞からの送金は母県の「経済的な生命線」であり、特に第二次大戦で壊滅的な被害を受けたとき、海外の沖縄救済運動は世界的広がりを見せ、「この運動がなければ、沖縄の三分の一はいなかったという意見もある」という。
 それまでの海外移住熱も七二年の本土復帰を機に一変し、アイデンティティの模索期に入った。八〇年代の沖縄地元メディアによる「世界のウチナーンチュ」キャンペーンが大きな刺激となり、移民の歴史の重要性が再認識され、国境を越えた連帯感が生まれた。
 本土復帰二十周年の節目に、県政は振興策の目玉として九〇年に「世界のウチナーンチュ大会」を開始。第二回(九五年)、第三回(二〇〇一年)、第四回(〇六年)と参加者数を増やし、世界的なネットワークを形成しつつあると分析した。
 最後に金城教授は、世代を重ねる中で自然と母県の親族との関係は希薄化するが、「大会」という経験を共有し、ルーツ意識を拡大してきており、「多言語、多文化、多国籍になってもウチナーンチュのアイデンティティを失わず、グローバルなネットワークをつくってきている」と締めくくった。

意識高いブラジルの県系人

 また、野入直美准教授は第四回大会でのアンケートを集計し、次のような傾向を発表した。
 約五千人の参加者のうち、中南米からは二〇%。「沖縄系である」というアイデンティティは全体では七七%だったが、ブラジルの参加者に限れば九〇%にもなり最高。日本語能力に関しても、全体では「日常会話OK」が二二%だったが、中南米では三七%、ブラジルでは四三%にもなった。
 県人会活動の次世代への継承は「うまくいっていない」が全体で一二%だが、ブラジルでは一〇%のみ。国外のウチナーンチュとの交流予定は全体では「ある」が四三%のみだが、ブラジルでは六〇%と高かった。
 総括すれば、世界の県系人の中でもブラジルは特にアイデンティティが強い上に、日本語能力が高く、県人会活動の次世代継承に肯定的なイメージを持ち、国外との活発な交流を予定している。
 一行はアルゼンチンでも記念シンポを行ない、帰国した。(おわり)