ニッケイ新聞 2008年9月30日付け
マンテガ財務相は〇九年の経済成長率を四・五%というが、政府内には二十七日、四%以下へ下方修正という悲観的予測が大勢だと二十八日付けフォーリャ紙が報じた。中央銀行のメイレーレス総裁がブラジルの企業は〇九年、内部整理に専心する時と提言。BRICsの「醜いあひるの子」ブラジルは、米危機の嵐から軽症で済み、回復は早いという見方がある。
〇九年の経済成長率を五%以上と強気発言をしたルーラ大統領が、政府関係者に否定的発言を慎むよう命じた。大統領府は不況が長引き資金流通量が枯渇するなら、三・五%と見ている。
大部分の見方は、ブラジルの経済環境が七千億ドルの米金融救済案にかかっているという。もし同案が早期可決されるなら、国外のクレジットは早々に回復し、ブラジルにも投資の機運が蘇る見込みとしている。
今のところ、ブラジルの主力産業も好感材料はない。中銀の経済成長率予測は、〇八年の五・一七%から〇九年は三・六%へ激減した。
米危機救済案が可決されれば、米経済は次期大統領の時代、一部金融調整が行われ不透明経済に二度目の妙薬が投じられる。米経済の回復には、オバマ候補のほうがマッケイン候補よりも持ち駒が多いと、ルーラ大統領は見ている。
ルーラ大統領はブラジルの次期大統領選を前に、〇九年度経済の否定的見通しを憂慮した。大統領は「仮に米経済が不況に遭遇しても、巻き添えを食うのは、ブラジルばかりでなく中国も同じ」だと弁解した。
ブラジル経済の前向きな姿勢を保つため、PAC(経済活性化計画)の公共工事へ力を注ぐ。特に国道の舗装工事は、優先する。PACに必要な予算の資金繰りは、大統領命令で行う。
ブラジル国内はクレジット枯渇とドル通貨の引き上げで、インフレ機運を憂慮した。一方では経済成長の急激な落ち込みを恐れて、政策金利の引き上げ緩和を検討して迷っていた。
中銀は、十月の政策金利を〇・二五%以下の引き上げに留め、年末まで据え置きにするらしい。ドル通貨が一時高騰したが、世界経済の落ち込み予想が、インフレを押し留めたので幸運だ。
BRICsが危機後、国際経済を牽引するという予測は怪しくなった。しかし、ブラジルは嵐をまともに受けていない。ブラジルはBRICsの「醜いあひるの子」であったが、被害は少ない。金融システムは、中国より健全で立ち上がりも早いと見られる。