難病患者らの期待高まる=幹細胞研究ネット構築へ=研究センター建設計画も
ニッケイ新聞 2008年10月3日付け
【既報関連】国内初のヒト胚性幹細胞株培養成功の報告を受けた保健省は一日、〇八年中に細胞治療のための国内ネットワーク(RNTC)を創設し、幹細胞研究支援の姿勢を明らかにしたと二日伯字紙が報道。幹細胞研究者や医療への早期適用を待つ人々への朗報となった。
RNTC創設は、今回培養に成功した胚性幹細胞と、人体細胞から培養する体性幹細胞との双方を対象とした研究促進が目的で、研究者のための情報や機材の提供とともに、新しい幹細胞株培養のための養成機関の役割も果たすことになる。
エスタード紙は、RNTC創設とともに、国内六カ所での研究センター建設も計画され、社会経済開発銀行(BNDES)が九〇〇万レアル増資の可能性ありと報じたが、脊髄損傷や筋萎縮性側索硬化症など、難病で苦しむ患者やその支援者たちも含め、幹細胞研究継続のために戦ってきた人々にとって、培養成功とその後の研究を支援する体制作りの報道は画期的な第一歩だ。
五月二十九日エスタード紙によれば、遺伝子異常などによる機能退化型の難病他、神経細胞、網膜、心臓やすい臓などの内臓諸器官の形成移植、皮膚や歯などの形成、不妊治療などが、幹細胞を利用した再生医療の適用可能範囲。具体的には、アルツハイマーやパーキンソン、心臓疾患、腎臓疾患、糖尿病、視覚障害などが考えられる。
現在の国内研究は動物実験が中心だが、八月二十三日フォーリャ紙が、国内で六〇〇万の患者がおり、治療法がない珪肺の患者一〇人に、本人の骨髄細胞から培養した体性幹細胞による治療を試みるとの報道もあった。
本人の細胞が使える体性幹細胞は、拒絶反応が起きないが、増殖能力に限界がある。一方、増殖能力は無限に近いが、他人の遺伝子を持つため、細胞核の入れ替えなどの処置を取ったり、何種類もの遺伝子で作った株のバンクを作ったりしなければ、拒絶反応が起きるのが胚性幹細胞。
各々の長所を活かしつつ利用範囲を広げることの他、本人の体性幹細胞の培養は迅速性が求められる脊髄損傷での細胞移植には間に合わない、ガン化の危険因子の除去など、種々の課題も残る幹細胞研究。それぞれの難点がクリアされ、医療現場への早期適用が可能となる日が待たれている。