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人文研=脇坂ジェニ氏が講演会=万葉集の魅力を語る

ニッケイ新聞 2008年10月07日付け

 サンパウロ人文科学研究所(本山省三理事長)は、九月三十日午後六時半より文協ビル十四会議室で、中南米での万葉集研究の第一人者で元サンパウロ大学(USP)教授の脇坂ジェニ氏(81)を招き、「私の万葉集」をテーマに約二時間の講演会を開いた。講演には約二十五人が集まり、脇坂氏が読み解く万葉の世界に浸った。
 脇坂氏は、今年三月に奈良県主催の第一回「NARA万葉世界賞」を受賞。四十七歳のときに万葉集に触れて以来、その研究に身を捧げ、八七年からは約十年間、USP日本文学講座主任教授、日本文化研究所の所長を務めた。
 講演会の前半では、「(万葉集の)漢字の羅列を見て、中国文化と接触し様々な過程を経て生まれた偉業に感動した」と、万葉仮名を使って四千五百余首の和歌を収めた日本に現存する最古の歌集の魅力を話した。
 また入門編として、奈良時代には八つの母音があったことが万葉仮名の使い分けで判明したことにも触れながら、二十巻からなる万葉集の分類説明、そこから読み解ける時代背景、当時の外国との関わりなど、現在の学説を述べた。
 後半では、氏の視点からの解釈を展開。第一巻一首目の倭の五王の一人、雄略天皇の歌「篭毛與(こもよ)美篭母乳(みこもち)布久思毛與(ふくしもよ)―」を挙げ、天皇が乙女に対し礼をつくしながらも、毅然とした振る舞いを伺わせる様子など、助詞の働きや音数律の考察から説明した。
 脇坂氏は、「圧縮され濃密な意味合いに、どのように訳するか、大きく戸惑った」と研究の苦労も漏らし、一首が持つ深みを参加者と共に味わった。
 講演に集まった一世、二世たちの中には、「ブラジルでこれほど高度な万葉集に関する研究を聞けると思わなかった」と、内容の濃さに圧倒された様子で感想を述べる人もいた。