ニッケイ新聞 2008年10月7日付け
「火事と喧嘩は江戸の花」の通り、江戸の町は火災が多かく、芝居やテレビの時代物でも人気が高い。あの鬼平も「火付け盗賊改め」であり、歌舞伎や講談では町火消しの「め組」と江戸相撲力士の大乱闘を描いた「め組の喧嘩」を役者らが舞台狭しと演じ観客らを唸らせる。この江戸の消防隊を創設し「いろは四十七組」を組織したのが名奉行・大岡忠相なのは余りにも有名だ▼これほどに火事が多く、被害も大きい。江戸の3大火事と言うが、最大なのは「振袖火事」とも呼ばれる明暦の大火(1659年)であり、武家屋敷も町人の店も焼き尽くし江戸城の天守閣も炎上した。庶民ら10万人が泉下に旅立ったとされるほどの惨事であり、歴史的な火災であった▼このように昔から日本は火災が頻発し犠牲者も多い。先ごろは大阪のビルでは15人が死亡し、10人が負傷した火事にしても、朝の2時過ぎであり、煙を吸っての一酸化炭素中毒や気道熱傷で大きな被害になったとされる。この建物は雑居ビルでいろんな事務所が入居しているし、火災現場は狭い個室の貸しビデオを観る怪しげなところだそうな▼しかも、46歳とかの男が警察に「放火した」と語り逮捕された。01年には東京・新宿の歌舞伎町にある雑居ビルが火事になり44人かの犠牲者を出し話題になったし、このような火災は次々に起こっている。消防庁によると、今年1月から6月までの火事は2万8千951件も発生し、その原因では放火が最も多く全体の11%を占める。これに放火の疑いが8・4%もあるから20%近くが放火に近いのだから、真に以って怖い。 (遯)