サンパウロ市=地盤沈下や家屋損壊続く=原因は地下鉄やビル工事=調査もせず出る建築許可
ニッケイ新聞 2008年10月8日付け
五月に、サンパウロ市で家屋のひび割れなどが多数発生と報じられ、改善策がとられると考えられていたが、七日フォーリャ紙が、サンパウロ市西部のブタンタン地区で家屋損壊が続いていると報じた。
同地区の家屋損壊の原因は地下鉄工事で、少なくとも二〇軒に立退き命令、二八〇軒にひび割れや塀の倒壊その他の被害が出ているという。具体的には、床や洗濯場、中庭などが沈下し、毎日のように床や壁にひび割れが増える、家が傾き、家の中にいると吐き気をもよおす、など。敷地の両端で二〇センチも高低差がある家もあるという。
問題の工事は、地下鉄4号線ブタンタン駅建設に関するものだが、地下水汲み上げや、地盤の弱さに起因する地盤沈下は、同地区での工事だけの問題ではない。
実は、二〇〇七年に起きたピニェイロス駅建設工事での大陥没事故や、サンパウロ市南部などで起きている家屋損壊についての苦情の多くは、同じ原因で起きたもので、五月二十五日エスタード紙は、ピニェイロスの陥没事故の後に転居した人々が、近くで始まったコンドミニアム建設工事のために、洗濯場は穴が開き、浴場のボックスの建て付けが悪くなる、車庫の床にゆがみなどの問題で、再度転居の必要が生じたことなどを報道。ピニェイロス地区などは、地下帯水層の問題に加え、粘土や砂の多い脆弱な地盤という問題がある。
ところが、市内全域の地盤の研究、調査が十分にされないまま、地下鉄やビルなどの建築許可が出されているのがサンパウロ市。六日エスタード紙には、サンパウロ市のショッピングセンターの三分の一が、環境に優しいと言いつつ、実際には経済的理由で地下水利用との報道もあったが、地下水汲み上げも、地盤沈下の原因となる。
サンパウロ市居住局では地下の送電線や送水管、その他の施設の詳細な地図を作成する計画と五月二十五日エスタード紙が報じたが、地下施設の他、サンパウロ市の地盤や地質の地図が無いというのも大問題だ。脆弱な地盤に大規模建設、不安定な地層を掘っての地下鉄工事には大きなリスクが付いて回る。
家屋倒壊やマイホームを失う不安に慄く住民をなくし、地下鉄工事の安全性確保のためにも、建設許可前の地質調査義務化や、早急な地質、地盤地図作成、再発防止策の検討、実施が不可欠だ。