ニッケイ新聞 2008年10月9日付け
一〇項目の中からサンパウロ市の最重要課題を選べと言われた市民の二三%が保健・医療を選んだ、と九月二十三日のアゴーラ紙が報じたことに加え、八日エスタード紙も、サンパウロ市人口の半分は医療機関などが不足している地域に住んでいると報道した。
アゴーラ紙報道のアンケートは、保健・衛生、交通、失業問題などの選択肢から一項目選択というもので、保健・衛生が最重要課題とした市民が二三%、以下、交通一五%、失業問題一三%、公害、公共治安が各一一%などとなっている。
一方、八日エスタード紙によれば、サンパウロ市では、国連の人間開発指数(HDI)の要領で、医療機関や医療行政の必要度を算出したINSという指数を導入。INSは二〇〇七年に創出されたもので、医療の充実しているのは、市内九六地区のうち、ジャルジン・パウリスタ、アウト・デ・ピニェイロス、モエマなど、中央部の一九地区。一方、医療の充実度が低く、救急医療機関などの不足している地域は、パレリェイロスやジャルジン・アンジェラ、ブラジランジアなど、南部、東部、北部の一二地区。
医療対策の不足している一二地区にはサンパウロ市人口一〇八〇万人の約半分が住んでおり、これらの地区では、現在一一五ある救急病院(AMA)増設なども課題。市内の医療行政にも格差があることが明らかとなった。
二〇〇八年のINSはまだ出ていないが、サンパウロ市保健局は「INSは日常的に使われる道具」となり、「必要度の高い地区を医療改善の優先地区とする」ことを確認。二〇〇九年に予定されているAMA増設(パレリェイロスとブラジランジア)の他、家族健康プログラムの浸透、家庭での対応や高齢者への対応の充実も、INSによって優先度が決められる。
一方、六日フォーリャ紙によれば、一九八八年制定の現行憲法で改善されたものの一つが保健・衛生面。一九九二年には四六五〇市中、二四五〇市にしかなかった保健所が、二〇〇五年には五五五八市中、五五五二市に設置となったのは、新憲法下での公共サービス拡充の結果だという。
診療拒否や暴力事件への対応策としても重視される保健・衛生面は、新市長の行政指針の一つともなると思われるが、今後はINSのような指数を全国的に適用し、各自治体の医療行政充実に用いることも可能だ。