ニッケイ新聞 2008年10月14日付け
戦後になってからの流行語に「女と靴下は強い」というのがあったけれど、長寿と云うところから見ても、確かに女性は強い。9月15日の「敬老の日」を前にした調査によると、100歳を突破した高齢者が過去最高の3万6千2百67人とわかった。ところが、これを男女別に分けると、女が3万人を超し男は5千人なのだからー何とも情けない。いや熟年の男子としては口惜しい▼まあ、こうした女性優位は古くからのことであり、近頃になって忽然と現れたわけではない。母親になるので肉体的に強いの説明は、解説力があるし、子を産み育てる子孫繁栄に尽力し苦労しているのだから、せめて長生きし世を楽しみ泉下への旅立ちはごゆっくりとが、女性長寿の正解であろう▼夏目漱石に弟子入りし「秀吉と利休」などの作品を発表し文化勲章に輝いた野上弥生子は、100歳の天寿をまっとうし、この世に「サヨウナラ」をしている。しかもーである。昭和47年から書き始めた小説「森」を執筆していた昭和60年に天に昇ったのだから、これはもう凄い。それに、「森」の文章もきちんとしている▼もう1人。こちらは99歳の白寿で昇天したのだが「わたし死なないかもしれない」の名言を残した恋多き宇野千代さんもいる。前夫と別れたあと、尾崎士郎や東郷青児らと同棲し北原武夫と結婚し離婚とかなり激しいが「おはん」で趙人気をえた閨秀作家である。と、このお二人が長命なのは、母親の肉体は頑強であるの説を越えた生まれつきの体質だろうが、それにしても、やっぱりご婦人たちはなんとも強く、男としては羨ましい。 (遯)