ニッケイ新聞 2008年10月16日付け
多くの移民や先住民が共存し、個々の文化や言語保存の動きも出ている中、十三日エスタード紙が、八一人の先住民がサンパウロ州内三〇の先住民部落で教える専任教師養成コースを卒業と報じた。
これら八一人は、二〇〇四年に始まった、サンパウロ州政府とサンパウロ総合大学(USP)の共同プロジェクト一期生。グアラニ、ツピ、テレナ、カインガン、カレナック各部族の部落に住む一五〇〇人の子供の、小学~高校課程の専任教師である。
先住民には大学教育は不要と言う祖父に反発し、勉強継続のため家を飛び出した男性もいる一期生。同期で机を並べた娘は、USPでの歴史の授業から、「生まれた時から部族語を話し、学校入学後は二言語を学ぶ」子供達に、部族の習慣や文化、伝統などを継承するために必要な多くのことを学んだと語り、別の卒業生は、「子供達により多くのことを教え、部落を継続させることが大切だ」という。
先住民教育専任教師養成コースでは、教育学他、各自の必要や興味に応じた授業を受けた一期生。学部の先住民教師は三つのグループに分けられ、グループ毎に部落事情に通じた指導教授が付く一方、学生は毎月一度サンパウロ市に集まり、一週間の集中講義を受ける。
こうして養成された先住民教育専任教師は、ポ語と部族語の二言語併用環境で、識字教育や部族文化継承に携わる。テレビ普及などが先住民文化継承や先住民の権利保証を脅かす中、第二言語のポ語を習得しつつ、ポ語で学ぶという苦労を経た教師達が、何を伝え、何を残すかが各部族の将来を決めるといえる。
十日フォーリャ紙が、教育学部や教員養成コース学生は在学中の成績の伸びが鈍いと報じたが、先住民との自覚のもと、子供達の必要を身に沁みて知っている特別コース卒業生には、学びたいことが山ほどあったはず。
十五日フォーリャ紙が動機付けされた教師抜きで学習成果は望めないとし、十日エスタード紙、十一日フォーリャ紙が、公立大学での教員養成のため二〇〇九年に一〇億レアルの国家予算と報じる一方、十五日エスタード紙が、義務教育九年に対し、国民の平均就学年数は七・三年、南東伯でやっと八年と報道。教育課程や教科別の必要もだが、学習者の具体的必要を知る教員養成により、個々の子供に適した教育環境作りが少し進んだ。