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預託金未還流を大統領批判=「大手銀は金を返せ」=金融機関の怠慢を怒る=中銀「正常化は徐々に」

ニッケイ新聞 2008年10月17日付け

 底打ちかと思われたサンパウロ市証券取引所が十五日、また音をたてて崩れ始めたことで、ルーラ大統領は中央銀行が金融市場に還流させるため割引いた預託金一千億レアルが大手銀行で滞り、信用緩和に役立っていないと抗議、金融機関に公的資金の返還を示唆したと十六日付けエスタード紙が報じた。中央銀行は、経済活動を平常通り機能させるには時間がかかると弁解した。
 政府の意向は、銀行に理解されていない。ドル高騰で損失を被った企業が「ブラジルには銀行がない」と金融システムの欠陥を訴えた。
 「金融危機で窮地に陥ったのは、中小投資銀行であって、大手銀行ではない。それで何故、銀行が機能しないのか。政府は数々の救済策を打ち出した。大手銀行が、中小銀行の息の根を止めようとするのは許せない」と大統領は怒っている。
 大手銀行が中小銀行の所有する債権を購入し、効果は徐々に出ていると、中銀は強調した。銀行が企業に融資しようにも、相手がどの程度金融危機でダメージを受けているのか判らない不安感も、貸し渋り傾向を助長しているという。流通が正常化するには、時間がかかるらしい。
 中銀の通貨委員会は、金融正常化の順序が委託融資から始まり、それから自動車や不動産ローンへ広がると説明した。
 企業救済は通常業務ではなく、非常時対策であると大統領が叱咤する。しかし、為替投機は個人の責任で行うものと中銀は見ている。政府は非常時といえども、市場原理の中でしか企業救済をしないと一線を引いた。
 欧米の不況は当然、ブラジルにも波及する。政府は公共工事で資金を流通させ、国外の影響を最低限に抑える考えだ。
 ルーラ大統領は、金融取引で国家経済を支えることに疑問を持っている。金融は生産しない。紙が右から左へ多くの人の手を経て動くだけ。こんな経済活動が座礁することは、今回の危機で学んだ筈だという。