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サントアンドレ=人質のエロアーさん死亡=警察の対応に疑問や批判=臓器摘出後の移植始まる

ニッケイ新聞 2008年10月21日付け

 【既報関連】十三日発生のサンパウロ州サントアンドレ人質篭城事件は、十七日六時過ぎに人質解放の情報で、一〇〇時間超の事件解決と安堵したのも束の間。その直後から、人質二人が凶弾を浴びていたとの情報が交錯。最終的に被害者死亡という幕引きとなった。
 十七日からのテレビ報道や十八~二十日伯字紙によると、十七日六時過ぎに現場に踏み込んだ警官隊は、頭部とそけい部に銃弾を浴びたエロアーさんと口から出血しているナヤラさん(ともに十五歳)を発見。銃弾はアウヴェス容疑者(22)によるもので、警官にも発砲した容疑者と警官が揉み合う脇を、警官に付き添われたナヤラさんと警官に抱きかかえられたエロアーさんが通過。
 二人はともにサントアンドレ市内の病院で手術を受けたが、手術も順調だったナヤラさんに対し、出血も多く、頭部の弾が摘出できなかったエロアーさんは十八日に容態悪化。十八日二三時半に脳死が宣告された。
 一方、十八日未明にサンパウロ市ピニェイロスの留置所に送られたアウヴェス容疑者を、留置場収監者達が脅迫。警官駐留で麻薬売買を妨げられたとして彼の命を狙う麻薬密売者と、留置所内の収監者から命を狙われる状況だ。元恋人の死を知らないまま、彼女を案じ、後悔の念を表していると、二十日グローボ・サイト。
 一方、今回の事件では、事件長期化や救出作業の手際の悪さ、一度開放されたナヤラさんを再び人質とされ状況悪化など、問題点噴出。現在最も疑問視されているのが、射撃音を聞いて踏み込んだという警察側説明と、扉の爆破後に銃声を記録した映像などの整合性で、入院中のナヤラさんからの事情聴取などにより、扉爆破後に人質射撃ということになれば、指揮官等の責任が今以上に問われることだろう。
 エロアーさんの死を二十日に知らされたナヤラさんの心の傷や、エロアーさん家族他が現場のアパートから転居を考えたりと、まだまだ続く事件の余波。多くの人に愛されたエロアーさんの埋葬は二十一日だが、エロアーさん家族の同意により二十日未明に摘出された臓器は、二十日午前中の心臓移植手術始め、少なくとも七人に命と光を与えることになる。ナヤラさんも週末には退院の見込みだという。