ニッケイ新聞 2008年10月23日付け
【既報関連】サンパウロ州サントアンドレの人質事件で死亡したエロアーさん埋葬の二十一日、高血圧で入院中のはずの父親が失踪。病身の父が娘との最期の別れを諦めて逃亡生活に入ったのは何故か。
二十一日のインターネットやテレビと二十二日伯字紙が一斉に報じているのは、エロアーさんの父親は、アラゴアス州(AL)元知事の兄弟であるリカルド警察署長殺害などに関わった犯行グループの一員であるとの情報だ。
報道によると、人質事件ではアウド・ジョゼ・ダ・シウヴァで通っていた父親、本名エヴェラウド・ペレイラ・ドス・サントス容疑者は、元AL軍警伍長で、九〇年代に同州で最も恐れられた犯罪組織の一員。同組織摘発を担当していたリカルド警察署長殺害(一九九一年)関与の他、組織内で最も恐れられた二人組の一人ともいう。
軍警らによる同組織がリカルド警部以外の殺人事件にも関与し、殺人、強盗、ゆすりに盗難車売買と、政治家や企業家らをバックに犯罪を繰返していたのはALでは周知の事実。首領とされる大佐が服役中で、支援者の一人の元州議も免職という状況下、身の危険を感じたサントス容疑者は、一九九三年に同州脱出。その後の一五年間、サンパウロ州に潜伏していた。
サンパウロ州では偽名を使い、警備員として働いていた同容疑者の身元判明は娘の人質事件がきっかけ。血圧が上がって倒れ、救急隊の治療を受ける様子が全国に放映され、当局に通報された。
サンパウロ州検察庁へ指紋照合などが要請された二十日に本人と確認、実際に捜査の手が伸びたのが二十一日だが、ALの関係者から身元が割れたとの連絡を受けていた本人は、十四日に弁護士と連絡、一部始終を語っていた。
報道関係者の電話取材に、殺人や盗みはやっておらず、AL当局は「無実の罪を被せ、生き証人の口を塞ぎたいだけ」と弁明した同容疑者は、捕まれば殺されると、娘の葬儀にも欠席した。弁護士も「事実関係検証まで同容疑者の警察出頭はない」と明言している。
衆目を集めた人質事件は、二十二日のナヤラさん退院と事情聴取、サンパウロ州トレメンベーに移送されたアウヴェス容疑者への警官による暴行捜査、警官が踏み込む前の発砲の有無でグローボ局とレコルデ局対立などの他、父親逃亡という小説顔負けの展開となっている。