ニッケイ新聞 2008年10月24日付け
ルーラ大統領は二十二日、ブラジル銀行と連邦貯蓄銀行(CEF)が、経営難に陥っている民間銀行や保険企業、年金プランなどの金融機関の株を購入して議決権を取得する権限を付与する暫定令を制定と二十三日付けエスタード紙が報じた。これは事実上、不良銀行の国営化政策になる。さらにCEFは投資銀行を併設し、建設会社の株購入に専念する。これら買収された金融機関は、経営が正常化し次第、競売に付す。
ブラウン英首相の金融危機救済方法を取り入れ、ブラジル政府も銀行株購入で、資金調達難で経営不振になった銀行の経営に加わる。両行は入札手続を経ずに、他の公立銀行の株取得もできる。
これまでの法令ではブラジル銀行はノッサ・カイシャなどの州立銀行を買収することは禁止されていたが、新暫定令では大幅な権限拡大があったため、銀行界再編が起こる可能性が生まれている。
二十三日付けエスタード紙論説では、「この暫定令には細心の注意が必要」と警告を発する。この暫定令が発表されたことで、むしろ、株式市場に「実は経営が危ない銀行があるのでは」という憶測が広がり、二十二日の株価下落に繋がった点を指摘し、「連邦議員らはじっくりと、だが素早い審議が必要である」と釘をさす。なかでも、この危機を利用してブラジル銀行の一人がちになりそうな状況への強い危惧が文中から伺える。
暫定令の適用範囲は、保険や年金プランも入っている。第四項には、全ての金融機関の株と議決権を購入できるとある。ドンブリ銀行やアングラ銀行も含めるのか。
さらに疑問なのは、保険企業や年金基金の運営機関、詐欺まがいの貯蓄投資などにも公的資金を投じて経営参加するのか。まるでゴミ回収業だ。悪知恵では数倍長ける極道たちに開かれた、幸運の扉ではないか、との意見もある。
暫定令は国内金融機関の保護策であるが、中銀に許された通貨交換は国外へも適用される。FRB(米連邦準備制度理事会)は、EUやスイス、カナダと同様の通貨交換制度を取り付けた。
同論説も「少なくとも今のところ、ドルとレアルを交換する必要がある状況にはなっていない。それとも、公にできない理由があるのか。いずれにしても政府には説明する責任がある」と注文をつけている。