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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年10月25日付け

 これは戦後のことながら「常用漢字」とかの制限があり、混ぜ書きや代用漢字が物凄く多い。今や世界的な金融危機で会社の経営が立ち行かなくなる「はたん」が増えている。ところが、新聞の記事では「破たん」であり「破綻」とは書かない。これも「綻」が表外字(常用漢字外)なので使えないから「たん」とせざるをえないのである▼「別れ」の「決別」にしても、本来ならば「訣別」なのだが、これも「訣」が表外字なので「決」の漢字を無理矢理に使う代用漢字で済ませてしまう神経は、本当に不可思議である。文科庁の国語課という役所が、難しい漢字は使わないようにの趣旨で審議会を作り毎年のように小難しい議論?を重ねての結果らしいのだが、どうも漢字や語句を必要以上にひねくり回しているの印象が強い▼唯―小説や月刊誌はかなり自由であり、難解な漢字も一杯あるし漢和や国語辞典、それに最近は「カタカナ語辞典」を近くに置かないと読みが進まない。ところがーである。新聞だけは、どういう理由付けかは分らないけれども「常用漢字」には素直に従い「混ぜ書き」と「代用漢字」ばかりが、嫌になるほど多い▼しかも、こんな可笑しなことが60年以上も続いているのだそうな。だがーこの異常に気付く新聞もあるのが嬉しい。雑誌「諸君」の9月号に高島俊男氏が「漢字についてのよけいなおせわ」の題で寄稿している文章で初めて知ったのだが、産経新聞が、これまでの常識を破って「虎視眈々の露」のように常用漢字以外の見出しを使い始めたと記している。これは真に以って結構であり、他の新聞も是非とも「右倣え」と願うや切である。(遯)