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日本の年金システム知って=CIATE・佐倉専務理事=「しっかりと手続きを」

ニッケイ新聞 2008年10月28日付け

 海外日系新聞協会の共同編集企画「年金問題・海外からの声」で先月十三日から四回にわたり、世界各国の年金問題を連載した。ニッケイ新聞では、消えた年金記録問題の解決に向けて社会保険庁が今年六月にかけてブラジルに送った「年金特別便」が、日本で就労経験のある日本語が理解できない日系人などに不親切な内容と報じたが、このほど国外就労者情報援護センター(CIATE)の佐倉輝彦専務理事から、「日本の年金システムの良さについても知ってほしい」と連絡があった。専務理事の話と、デカセギに関係ある日本の年金システムの一部を紹介する。
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 佐倉専務理事は「〇八年十月現在の制度では、例えわずか三、四年しか年金に加入していなくても、受給資格を満たせば、ブラジルでも日本から送られてくる年金を一生涯受け取れる可能性がある。日本の年金は大変有難いシステムで、この恩恵を受けて喜んでいる日系人は多い」と語る。
 厚生年金や国民年金でも、二十五年の加入が原則とされているが、これは正確には年金の「受給資格期間」が二十五年(三百カ月)以上あれば、日本の永住許可を得た外国人(ブラジルではブラジル国籍者の日系二世や三世など)や、海外に居住する日本人や二重国籍の二世などに、年金受給資格が発生することを意味する。
 具体的には、日本でデカセギ就労中、例えば四年(四十八カ月)しか年金に加入していなかった人でも、この「年金加入期」と「保険料免除期間」(以前国民年金への加入が任意であった時期で、国民年金保険料免除として認められた期間)と「合算対象期間(通称・カラ期間)」の三つの合計が三百カ月以上になれば、年金の受給資格が発生する。
 受給資格の可能性がある人には、その人が厚生年金加入の場合は六十歳の誕生日前に、国民年金加入者の場合は六十五歳の誕生日の前に、社会保険庁から『国民年金・厚生年金保険老齢給付裁定請求書』をはじめ、関連書類が送られてくる。これに記入し、必要書類を管轄の社会保険事務所に申請。ここで認可されると、『国民年金・厚生年金保険年金証書』が届く。これに添付される「年金保険裁定通知書」にある年金額が、ブラジルの被保険者に日本から振り込まれる段取りだ。
 「合算対象期間(カラ期間)」とは、年金の受給資格期間として算入される期間のこと。この期間には実際に保険料を払っていないので、年金の受給額には反映されない。この対象期間の算入条件には細かく八項目以上あり、日本で永住許可を得た外国籍の者が、この条件に当てはまればカラ期間が認められる。
 こうした細かい規定があるため、受給手続きは社会保険事務所などに問い合わせるのが前提となる。ただ、しっかりと手続きをして年金がもらえるようになれば、その恩恵はやはり大きいと佐倉専務理事は強調する。
 「あるデカセギ者が在日中に厚生年金に数年加入し、帰国した際に年金の脱退一時金を請求せず、六十歳で受給資格を満たせば、ブラジルの自分の口座で年金を手数料なしで生涯受け取ることができるわけです。もし障害者になったら、障害年金が支給されます。受給額はレアルの為替状況にも影響されますが、何年かすると元が取れるだけでなく、長生きする甲斐も出てくるのでは」(同専務理事)。
 佐倉専務理事はまた、デカセギ経験者やこれからデカセギに行く人に対し、次のようにアドバイスしている。
【一】日本で年金に積極的に加入する。【二】日本にいる間に永住許可を取得しておく。【三】年金手帳や年金証書を保管する。(後日、年金の申請に絶対必要)。【四】帰伯時に、ブラジルの居住先を社会保険庁や社会保険事務所に届けておく。【五】年金の受給適正年齢になっても、居住先を届けていなかったり、帰国後に住所変更をしたなどで社会保険庁から年金受給請求の「裁定請求書」が届かない場合は、自分から照会手続きを進めること。年金は本人が請求しないと絶対支給されないので注意。