ニッケイ新聞 2008年10月29日付け
二十六日から十二月六日にかけて、世界二〇カ国から四〇人の芸術家の作品を集めて開催の第二八回サンパウロ・ビエンナーレが、とんでもない幕開けとなった。
二十七日伯字紙によると、開幕初日の二十六日夜、サンパウロ市イビラプエラ公園内のパヴィリオンに侵入した犯行グループが、隠し持ったスプレーペンキで、作品展示がされてない二階の壁や柱などに落書きを始めたという。
現場となったパヴィリオンは、ニーマイヤー氏設計でサンパウロ市文化財の一つだが、警備員らと落書きグループが、殴る、蹴る、走るの大騒ぎで、一時は会場全体が騒然とした雰囲気に包まれた。
犯行に及んだのは、サンパウロ市内の芸術大学元学生(通称ラファエウ・ピショボンブ)を中心としたグループのメンバー約四〇人。事件発生から軍警到着の八時までの三〇分間、会場は封鎖され、二人が逮捕された。
会場への荷物持込み禁止規則を逆手に取り、スプレーペンキをベルトに挟んで持ち込んで犯行に及んだグループは、数日前から文書やインターネットで参加者募集。会場近くのDetran前に集合後、一〇人単位で現場へ向かったという。
ピッシャソンと呼ばれるスプレーペンキでの落書きは、七月の芸術大作品発表会他、九月にギャラリー・ショッキ・クウツラウで発生など。二十八日フォーリャ紙によれば、サンパウロ市内の代表的な壁画類破壊を宣言した犯行グループにとって、九月の事件は小手調べで、ビエンナーレと並行する形で週末に被害にあったのは、レボウサス、Dr.アルナウド両大通りを結ぶトンネル内の日本移民記念壁画、ヴィラ・マダレナの「ベコ」、24・デ・マイオのSescの壁画。
犯行者たちは「壁画が資本主義者の手に委ねられ、商業主義に利用されている」こと、芸術品が「装飾用やギャラリーでの展示用に供される」ことへの抵抗だと言うが、壁画作家は「道行く人が芸術に触れ、庶民が芸術を楽しむことを妨害している」と反発。
落書き回避のための壁画もあるが、真に芸術を愛するなら芸術品を損ない得るものか。ビエンナーレ会場では落書きを消し警備を強化したが、素人目にも美観を損なう落書きは、他者の財産や世界的観光都市と認定されたサンパウロ市の価値を損ね、他者の楽しみをうばう行為だ。