検察庁=ビール会社に賠償金請求=宣伝で社会に損害与えたと=レイ・セッカの効果薄れる
ニッケイ新聞 2008年10月31日付け
検察庁が二十八日、大手ビール会社三社を相手に二七億レアル余りの賠償請求手続きと、二十九日伯字紙が報道。ビールの宣伝で消費が拡大し、事故や病気が増加の上、予防や治療といった経費の分、社会に損害を与えたというのが理由だ。
訴えられたのは、AmBev、Schincariol、Femsaの三社で、請求額は二〇億レアル、四億二四〇〇万レアル、二億三九〇〇万レアル。これらの額は、二〇〇二年~二〇〇六年の統一健康システム(SUS)関係三七〇〇万レアル他、社会保険院(INSS)など、種々の経費から算定したという。
同日エスタード紙によれば、国内の病気や死亡の一〇%は酒類に起因、交通事故の六〇%は飲酒運転。暴力事件の七〇%は飲酒後に発生し、十二歳から六十五歳の一二・三%はアルコール依存症で、SUSでのアルコールや薬品依存症治療費は三六八八万レアル。小学~高校生の六五%は飲酒経験があり、その半数は十歳から十二歳で飲み始めているともいう。
ちなみに、一月~九月のビール消費量は前年同期比六%伸び、五五〇万リットルを消費。年間の売上げは二〇〇億レアルで、宣伝広告費は、〇六年が七億レアル、〇七年は九億六一七〇万レアルに上る。
検察庁の賠償金請求に対しては、宣伝だけで消費量が拡大するわけではないと、告発事由そのものを疑問視する声もある一方、「我々は雇用を創出し、多額の税金も払っている」と主張するのみで、酒類のもたらす害には沈黙を守る業界や社会への警鐘として大いに意味ありとする声もある。
発効当初こそ、取締り強化で交通事故死者や負傷者減少、病院経費も節約と騒がれた飲酒運転禁止法(レイ・セッカ)効果も、九月二十三日エスタード紙が国道での同法の効力薄れると報道後、十月十七日同紙が一五州都での事故や死者減少率低下、二十二日同紙が七月~十月の四カ月の死者減少は五%のみと報道。酒類による被害減少は容易なことではない。
「ビールはブラジル人のパイション」といって飲酒運転の運転手を釈放した判事もいる国柄だけに、司法当局が賠償請求を受け入れるか否か疑問だが、ビールが美味い季節、どういう姿勢で酒を手にするかと問い掛けられる問題ともいえる。