ニッケイ新聞 2008年10月31日付け
中銀の通貨委員会(Copom)が二十九日、基本金利(Selic)は一三・七五%に据え置くことを満場一致で決めた。ルーラ大統領は基本金利を引き下げ、経済活性化を希望したが、願いは届かなかった。
中銀は据え置き理由を、国際経済の悪化による不確定要因に帰した。金融危機を考慮せよという執拗な圧力が中銀にかかったが、それでも中銀は譲らなかった。
サンパウロ州工業連盟(Fiesp)のスカッフ会長は金利据え置きを妥当とし、クレジットの復活と税制改革を行い、経済活動の妨げを除くことを提言した。「ブラジルは苦境を切り抜けるため、投資の管理基準を至急に設定すること」という。
基本金利据え置きに対する商業連盟の反応は、否定的だ。商業界では、金利据え置きが解雇リスクにつながるという。クレジットの枯渇と市中金利の引き上げ、融資期間の短縮を挽回するため、基本金利の引き下げを期待していたようだ。
サンパウロ大学(USP)のシルバー教授は、不確定要因と信用収縮の板ばさみで、Copomがジレンマに陥ったと見ている。世界各国の中銀が金利引き下げへ向う中、逆行コースを選んだブラジル中銀の判断は、歴史に残る英断だと皮肉った。
同教授によれば、リスクの観点から見ると、インフレ・リスクよりも経済減速リスクの方が、はるかに高い。これまでは、流通量を抑制するため金利政策を行った。しかし、今回の金融パニックで、その必要はなくなった。
中銀の通貨政策では、〇九年の経済成長率が三%以下になると同教授は見ている。需要は自動的に抑制され、インフレの心配はない。自動車の売上急減がそれを示している。中銀は為替の動向次第で、基本金利を引き下げるという見方だ。