ニッケイ新聞 2008年11月1日付け
「喜びを心に秘めて帰国します」―。十月十六日からサンパウロ市内の映画館で開催されていた「第三十二回サンパウロ国際映画祭」に招待されていた故岡本喜八監督のみね子夫人。最終日となった三十日、関係者との交流会を開いた映画館「シネマテカ」で、そう約二週間の滞在の感想を話した。
同祭では、岡本監督の十四作品を上映。みね子夫人が国外の映画祭に招待されるのは、昨年のベルリン国際映画祭以来二回目となる。
両映画祭を比較しながら、「(岡本作品は)日本のことが分からないと理解が難しいのでは、と思っていたが、観客は素直に正確に反応してくれた。私の方が感激した」と話す。
今年がブラジル移民百周年にあたることもあり、「苦労された日系の方と話したかったが、機会がなかった」ことから関係者の協力で今回の交流会が実現、映画『日本のいちばん長い日』に三十人を招待した。
みね子夫人は来場者らと歓談を楽しみ、上映前のあいさつで、「ブラジルで上映できたことを岡本がどれだけ喜んでいるか」と涙ながらに話し、「喜びを秘めて日本に帰り、仲間に感動を伝えたい」と語り、拍手が送られた。
かつてコロニアで上映された岡本作品のポ語翻訳を手掛けたこともある田中洋典さんは、「とても懐かしい」と笑顔で話していた。
みね子夫人は一日に帰国の途に着いた。