ニッケイ新聞 2008年11月4日付け
一〇〇〇万人都市のサンパウロ市では、青少年向け社会サービスは市中央の裕福な人たちの住む地区ほど充実し、その格差は五六倍にも及ぶ、と三日付けエスタード紙が報じた。
例えば、人口七万人のモエマ区は、家長の収入が二〇最低賃金以上という住民が五三%。就学年数一二年以上の住民約七〇%、一〇~一九歳の青少年女子妊娠率は一・七三%、殺人事件発生率も一〇万人当たり一・五人と先進国並みの同地区では、一八歳までの住民への教育その他の社会サービス対象定員は、一〇〇〇人に付き五六四人。
一方、社会サービス普及率最低のペルース地区は、一八歳までの住民への社会サービス対象定員は一〇〇〇人に付き一〇人。極貧青少年は一一%、殺人発生率も一〇万人当たり三一人。一〇~一九歳の青少年女子妊娠率も一七%に達する。
この数字を上位、下位各一〇地区で見ると、上位地区の社会サービス対象定員は二八五人以上、一八歳以下の極貧青少年一・五%。一方、下位地区の社会サービス対象定員は二四人以下、極貧青少年は一二%。九六地区平均は、対象定員八十九人、極貧青少年一七%。
下位地区で特に深刻なのは、女性就労への最大の障害となる保育所の不足。子持ち女性が就職先を見つけるのは子供がない場合の一〇倍困難で、保育所の不足などに起因する教育や文化的問題による暴力事件は、全国平均二〇%に対し、四四%と高い。逆に全国で四八%の家庭内または近隣での暴力が、サンパウロ市では三八%に止まっている。
また、家庭の貧困に起因する学校中退、麻薬関連の問題では、子供が家出した家庭の親の七〇%は精神的なケアが必要な状態だという。子供との対話も出来ないほどすさんだ母親が原因で家出した少年が、更正プログラムの担当者から親子ともにカウンセリングを受けて帰宅するなど、児童相談所や社会福祉士らの働きは重要だ。
政府や州、市の生活扶助や支援プログラムが貧困者の多い地区に重点的に向けられても格差是正に遠いサンパウロ市。カサビ市長は、二〇〇九年~一一年に、新生児死亡率や青少年女子妊娠率、青少年向け社会サービス充実など、二〇項目の改善を約束。ユニセフも〇九年以降、公約実現の監視、支援のため、一五〇万レアルを投資するという。