ニッケイ新聞 2008年11月5日付け
熊本県下益城郡城南町で同地出身の上塚周平を顕彰する活動を行なう「イッペイの会」(米原尋子会長)はこのほど、上塚が生前詠んだ代表句をまとめた小冊子「俳人上塚周平」を発行した。無料。
十月十六日に来伯した米原会長によれば、同冊子は、一九四〇年に発行された竹崎八十雄著「上塚周平」(絶版)の末尾に収録されている代表句を抜粋した。掲載句は二百句以上ある。
前半部は、東京帝国時代から辞世の句まで、上塚の人生を辿りながら紹介。後半は「まはき」誌(中田みずほ選)と俳誌「ほととぎす」(高濱虚子選)からの「瓢骨俳句集」を載せている。「重複句もあるが、生涯を移民の苦労に寄り添った上塚のこころを偲んで頂けたら」と話す。
上塚は、旧制熊本第五高等学校で学んだ夏目漱石の影響で俳句を始めたと言われ、生涯で四千句以上をつくったとされる。しかし、自身の著作や資料がないことから、これまでその多くが知られてこなかった。
「周平さんは日記のように俳句をつくっていた。難しい漢字もあるが、性格を反映して素直でシンプルな句が多い」という。
同会の会員は、地域の主婦らが中心で、現在五十人ほど。各地域のイベントで、会の活動や上塚の功績を紹介するチラシなどを配るとともに、日伯友好親善を目的に、ブラジルから同県を訪れた人たちの受け入れや歓迎会なども催している。米原さん自身も、学校などの招待で、講演会を開くことも多いという。
同冊子は、千五百冊を発行。来月、熊本近代文学館で開催される移民文学展の入場者にも無料配布されるという。その他は、熊本県の教育機関や図書館などに寄贈される。
部数は多くないが、現在、ニッケイ新聞で希望者に配布している。問い合わせは(電話11・3208・3977)まで。