ニッケイ新聞 2008年11月6日付け
オバマ米新大統領をよく知る元駐米ブラジル大使のルーベンス・リクペロ氏とルーベンス・バルボーザ氏は四日、対伯関係で変化は僅少とする見解を表明と五日付けエスタード紙が報じた。世界の中心的存在の米指導者は、短期間に米経済を立て直すという最優先課題を背負って登場する。それはテロ対策と中東問題に匹敵する。両大統領候補の選挙戦中、ブラジルは視野の外に置かれた。
米新政権の優先課題に、ブラジルが影響を及ぼす力は極めて少ないとリクペロ氏が述べた。米新政権にとって、ブラジルとは何かと問うに価しない。ラテン・アメリカ問題とは冷戦の終焉以来、麻薬と密入国、それに自由貿易しかない。
「通商関係を取り上げるなら、ブラジルはオレンジ・ジュースとエタノール、砂糖が補助金問題で米政府を悩ませた」とバルボーザ氏が語る。これらの産物は、米生産者が議会に強いロビーを築き、大統領の一存で決められないからだ。
これからは、ロビーを通じた訴訟が益々増え、輸入障壁の原因になる。それに金融危機と失業問題が上乗せされると、バルボーザ氏は見ている。
新大統領にとって最初の関門は十五日、ワシントンで開催されるG20会議となりそうだ。オバマ氏が出席するなら、ブッシュ大統領の死に体政権の後始末をさせられる。新大統領がピンチをチャンスに切り替えられるかが注目される。
こんな背景の中でブラジルは、一月二十日就任の米新大統領の素顔を見、対米外交を積極的に取り組むことになる。米外交政策で南米が軽視されるのは、ブラジルにとって都合がよいとバルボーザ氏はいう。
米経済が三・五%の経済成長率を示したとき、ブラジルは継子扱いされ米市場から締め出された。今は失地回復のチャンス。米市場の将来を軽視してはいけない。ブラジルは南半球重視へ舵を採っているが、よく熟考する必要がある。
ブラジル外務省は、イラン接近やキューバ支援を表明した。オバマ氏もキューバに対し、両国間の旅行や送金を緩和する傾向にある。オバマ氏とルーラ大統領は下から叩き上げた人物として一脈通じるものがあり、友好関係が築かれると、リクペロ氏は見ている。