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自然保護は破壊に優る=共存することで受ける益=正しい知識が参加を促す

ニッケイ新聞 2008年11月7日付け

 一九八八年に凶弾に倒れた森林保護運動家シッコ・メンデス氏ら提唱の「存続中の森林は、破壊されたもの以上に価値がある」という主張を実体験する人達がおり、環境投資も増加、と六日のエスタード紙が報じた。
 一例は、大サンパウロ市圏の水供給源のカンタレイラ・システム。ミナス州の人口二万四〇〇〇人の町を水源地とする川の水質と水量は、地域住民の協力を得て始めて維持できるが、国家水資源庁(ANA)や非政府組織と市役所とが協力する企画では、協力者への経済的支援で、水質や水量の維持、回復とともに、住民が経済的に潤っている。
 大西洋沿岸森林地帯にありながら、森林伐採や牧場造成などが進んでいた同地域では、川の流れに沿う地域の土地を囲い、一五九レアル/ヘクタールを毎年払うという条件で協力者募集。協力者増加で環境保護法違反が減り、協力者も牧畜での一二〇レアル/ヘクタール以上の増収だ。
 また、柵で囲った土地には自生していたはずの種類の木を植え、土石流や洪水を防ぐ溜池を作った後は、ゴミの処理場やごみ収集システムの構築という。ポッソス盆地の環境保護のための投資額は一二〇万レアル。柵設置後一月で水源の水量が増えたという所もあり、結果が出始めている。
 「水源枯渇や水質汚濁発生後に原因を調査し、対策をとるより、効果的で廉価」とANAディレクターは言うが、伐採地への植林や、二日フォーリャ紙の報じたチエテ川上流での魚孵化、育成ならびに放流プロジェクトのような事業も、環境保護や回復の重要な一面。
 ちなみに、一ヘクタールに牛一頭といわれる牧場は、伐採地を焼き払うだけで一一〇トンの炭酸ガス排出。牛一頭飼育で排出される炭酸ガス総量一六五トンを、小型車で一万キロ走行時の炭酸ガス(一トン)と比べると、破壊効果は甚大だ。
 その他、アクレ州で古来のゴム製法回復でタイヤ用ゴム供給の何十倍の利益を生んだ企画や、先住民が使う樹液で作る顔料商品化など、自然と共存し、古来の知恵を活かした生活拡大ともいう。
 一方、利益の一部を自然保護資金とするタイプの投資ファンドを開発した銀行は、貯蓄以外のプラスαが人気を呼び、売れ行き好調と。世界的な環境への意識の高まりの中、リサイクルや、緑のファンド利用も市民が参加できる環境対策だ。