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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年11月13日付け

 「移住地では最初、ヨーロッパ人は教会を作り、日本人は学校を作る」―。日本人が教育に重きを置いていたことを表した言葉だ。全伯にある日系団体は四百五十ともいわれるが、その多くが学校を母体としたものだったのだろう。しかし、現状はどうか。地元文協などが経営する日本語学校では、慢性的に教師がいない、とよく耳にする▼「でもしか先生」という言葉がある。教師でもするか、教師しかできない、と侮蔑と自嘲を込めたものだが、でもしか先生すらおらず、JICA青年ボランティアに頼っている学校も多いと聞く。年々ボランティアの応募は減っており、これから地方の日本語教育状況はますます厳しくなっていくのだろう▼今年六月ロライマ州初の日系団体(ANIR)が発足した。初代会長に就任した辻クラリッセさんに設立の目的を聞くと、「日本語講座を開講するうえで、正式な団体じゃないと、JICA青年ボランティアが派遣されないと聞いたから」だという▼一世が少ない同地では日本の支援に期待するしかないのかも知れない。〇六年に返還されたサントス日本語学校では、今週末に日本語講座に関する初の会合が開かれるが、教師不足の状況は例に漏れない▼今年二月、日本の海外交流審議会の答申で、国際交流基金の日本語教育拠点を増強することが発表されたが、世界最大の日系社会があるブラジルと他国を同列に考えることは出来ないだろう。基金は非日系人を主な対象としているが、日系団体との連携が図れないものか。両国の将来を踏まえた人的投資と捉え、特別な措置を期待したいものだ。(剛)