ニッケイ新聞 2008年11月18日付け
ブラジル宿願のドーハ・ラウンド復活に向けて世界貿易機関(WTO)は十五日、加盟国を招き十二月に自由貿易協定を決着する意向を示したと十七日付けエスタード紙が報じた。会合は十日開催の見込みで、G20ワシントン会議の初穂とされる。WTOのレミー専務理事は「世界経済が危機に瀕するいま、支持を行動にする。解決策を一つずつ実行し、通商システムを新規構築することだ」と声明を発表した。
決裂座礁したドーハ・ラウンドの修復に向けて、ブラジルが渾身の努力を注いだに関わらず、メルコスールの足並みはバラバラ。WTOはオバマ次期米大統領にも打診済みであり、次期米政権が同件を意想外としないよう言質を取った。
G20は十五日、世界経済救済策として年末までに国際通商協定を設ける必要があるということで合意した。G20参加国代表は来る一年、保護制度を設定しないことでも合意した。しかし、市場開放については十七日、WTO各国大使がG20の決定事項について内容を協議する。
WTO専務理事が、G20からドーハ・ラウンドに向けた通達に、多大な政治的支援が必要だとした。実務会議の机につくと「総論賛成、各論反対」で議論百出する。
市場開放に関するドーハ・ラウンドは二〇〇一年、始まり二〇〇五年締結の予定であった。しかし、先進国と新興国の間の溝は埋らず、決裂のまま無期延期になった。それが米金融危機と世界的不況によって再考察の糸口が開かれた。
WTO伯大使の言葉によれば、ドーハ・ラウンドは九・一一テロのお陰で取り上げられたに過ぎないという。今度は金融危機のお陰で俎上に上げられ、真剣に取り組まれることになった。いわば、天の采配だと述べた。
ドーハ・ラウンドは、ブラジルが市場開放の音頭を採るいっぽう、アルゼンチンが反対の急先鋒となっている。未熟な新興国にとって市場開放は死活問題であり、不況と失業で混乱を招くという。同じメルコスールで内ゲバを演じた。
WTO会議の前に、ブラジルはメルコスール内の意志統一を図る必要がある。強い団結を目指すことで、金融危機解決へのリーダーシップを世界に発信できるかの正念場になりそうだ。