ニッケイ新聞 2008年11月22日付け
最初にJICAサンパウロ支所職員の村上ビセンチさんは「三千~四千人もの元研修生がいるにも関わらず、連絡がない状態。これを機に関係を深めて」と開会のあいさつ。ブラジル日本文化福祉協会の上原幸啓会長は「日本で研修できたことに感謝し、恩の気持ちを忘れてはダメ。研修成果を自分のものだけとせず、広く日系社会や地元に還元してほしい」と語った。
日系研修員制度で一年間札幌に滞在してコンピューターグラフィックを学び、今年帰ってきた三宅みのりさんは「専門分野だけでなく、生活の中で見るもの全てが勉強になった」と報告した。
日系第三国専門家派遣事業でアフリカのモザンビークに今年一月まで三カ月間指導に行っていた伊藤ルーシーさんも、スライドで体験発表。日本人専門家が直接行くより、日本式のやり方を理解するポ語話者の日系専門家が赴いて指導するほうが効率的だと制度の説明をした。
その他、農業専門家の石村イサオさんは有機農業を他の南米日系社会に伝えた経験を説明した。日系社会青年ボランティアの高井奈穂さんも援協のあけぼのホームで介護福祉士として活動している状況を報告した。
休憩をはさんだ後、心理科医の中川卿子さん(〇三年研修生)は、日本のデカセギ子弟が抱える問題を列挙し、「日本社会に適応するには、学校が唯一の入り口。ここでの対応は非常に重要」と強調した。
沢口グラシアさん(〇三年研修員)は群馬県東部の児童相談所に一年間いた経験から、「日系研修員が訪日中に少しでも在日ブラジル人コミュニティの役に立つような活動をすることもできるはず。子供の相談相手になるだけでも有益だ」と提案した。
エイズ調査を行った滝田園美さん(〇五年研修員)は、「日本のHIV感染者の二五%は外国人。その多くはブラジル人だ。エイズの予防知識の普及が必要」と語り、「元研修員は日伯の架け橋ともいうべき存在。もっと積極的に関わっても良い」とした。
最後の小島アナさん(〇六年研修員)はインターネットで群馬、愛知、岐阜三県の国際交流関係者を結び、今回のセミナーを生中継で伝えた取り組みを発表。日本側の三人から、「子供を連れてくるなら責任を持った教育を」などと訪日するデカセギへの要望が述べられた。
参加した元研修員からは口々に「このような機会を作り続けることが重要」という声が聞かれ、次の会合の日程もさっそく発表されていた。