ニッケイ新聞 2008年11月22日付け
31万トンもの空母級タンカー乗っ取りでふっと「倭寇」が思い浮かぶ。16世紀に朝鮮や中国沿岸を略奪し大いに暴れた日本の海賊のことである。丁度、明王朝の頃で南倭と呼び北虜と共に二患として恐れたそうである。北九州の海民が船に乗り込み海が狭しばかりに狼藉の仕放題だったのだが、ソマリアの海賊が漁民であり、どこか似たような感じもする▼明の人たちは「倭寇」を「八幡船(ばはんせん)」とか「海乱鬼」と呼んだけれども、アフリカ海賊も難敵としかー申しようがない。サウジの巨大タンカーをモンバサの南東沖830キロで襲っているのだから、もう小型の武装船ではなく、かなり大きな船艇に違いない。しかも、昔のように積荷を奪うのでなく「今年は65隻が襲われ29億円の身代金を獲得」の国連報告もある▼小麦を搬送中の中国船が襲われてもいるし、日本や各国の被害は大きい。世界の諸国がこの不逞の輩を野放しにしているわけではない。米海軍やNATOなどの艦艇が数十隻も派遣され厳しい警戒網を敷いている。それでも襲撃事件は増えるばかりなのである。安保理も動き出しているが、決定的な防禦対策は難しく、航路の変更か海軍出動の二つしかないらしい▼日本にしても「沈黙」だけでは済むまい。その昔、元海軍大佐で自衛隊の空将から参議員になった源田実氏が、マラッカ海峡防衛論を展開し話題になったが、石油などを輸入して生きている日本にとって海上の航路は生命線である。インド洋の安全を守るのは、日本の使命のようなものであり、護衛艦の派遣も真剣に検討するときが来たようだ。 (遯)