ニッケイ新聞 2008年11月25日付け
二十三日エスタード紙論説や十八日フォーリャ紙によると、全国での警部や警察署長クラスの人材不足は深刻。同クラスの人材不足は、市民からの通報で軍警が現場に急行して犯人を逮捕しても、供述書にサインをし、捜査を指示する人材不在を意味する。
両紙によれば、最も深刻なセアラ州では、七六二人いるべき警部が二三一人しかおらず、七〇%の不足。一八四市中一三〇市で警察署長不在だ。北リオ・グランデ州は、六〇%の市で警察署長または警察署不在。サンパウロ州内陸部でも複数の市の警察署長を兼任する警部がザラなど、連邦直轄区とセルジッピ州以外の二五州で、四一七一人の警部が不足している。
実際には、判事や検察官がいても、警部がいなければ捜査が進まず、犯罪が野放し状態となることさえあるが、このような一例がマラニョン州。アサイランジアなどで警察署長不在で、刑務所官吏や警部の不足が治安悪化や市民の不安を煽るという状態が増えている。
十二日のG1サイトによれば、銀行帰りに強盗に襲われ警察に行った男性は、調書が作成されず肩を落として帰宅。問題の深刻さは同州の殺人率の高さからも窺われる。
マラニョン州での殺人事件は、全国的な減少傾向とは逆に、〇三年~〇六年に一四・七%増加。一〇万人当り一二・二人だった殺人被害が、〇五年に一時一七人に。〇六年は一四人に減ったが、銃器による殺人発生率がかなり高い。
同期間中の殺人は、アラゴアス州で五九・四%、アマゾナス州八五・二%など一一州で増加しているが、マラニョン州では、自治体の警察力不足や不在が暴動的破壊行為増加につながっているとG1サイト。警察署長や現場検証担当官が不足して捜査が出来なければ、司法当局は容疑者を釈放せざるを得ない。
こういった環境で犯罪増加が起きるのは当然で、顔馴染ばかりで犯罪も少なく警察不要という地域は少ない。警部を始めとした警察官補充は治安維持の要だが、給与面での不満も大きく、有資格者は警部になるより検察庁などに行きたがるというのが実態ともいう。警部公募も各地で実施中だが、サンパウロ州ベルチオーガ市で二十一日、ホテルを襲った強盗が宿泊客を総なめにして金品略奪という事件では、ホテル従業員の通報から一時間四〇分後に警官到着。警察力の不足は対岸の火事ともいえない状況だ。