ニッケイ新聞 2008年11月27日付け
視聴率が低迷しているとはいえ、どの歌手が出場するかが毎年大きな話題になり、コロニアでも人気が高い「NHK紅白歌合戦」。第五十九回となる今年、番組内でブラジル日本移民百周年企画を行うことが発表された▼内容は明らかにされていないが、NHK開局八十周年を記念したドラマ「ハルとナツ」で妹ナツを演じた仲間由紀恵さんが紅組の司会だけに、撮影エピソードを振り返りながらのコメントなどもあるのではないか。ちょうど放映時間中に、リベルダーデ広場では、恒例の餅つきが行われる。そんなコロニアの様子を生中継すれば、百周年最後のアピールとなることは間違いない▼その特別枠に出場する歌手は、コロニアでも愛唱される『島唄』で有名な宮沢和史さん。来伯は二十回を超え、九月には横浜メリケンパークでMPBの大御所ジルベルト・ジルとコンサートも行った。宮沢さんは数年前からコロニアにも関心を持ち、親交があった中川トミさんの人生をテーマにした曲『足跡のない道』を今年七月にブラジル各地で披露、静かな感動を呼んだことは記憶に新しい▼ところが、関係者からNHK側が『島唄』の演奏を検討しているらしい、と聞いて驚いた。確かに『足跡―』は認知度も低い。視聴率も気になるNHKとしては、安全牌を打ちたいところだろうが、ブラジル移民企画で、沖縄戦をテーマにした『島唄』では本末転倒も甚だしい▼一方、十年連続でブラジル公演を行った井上祐見や日系三世の南かなこを期待していたファンのため息も聞こえてくるが。 (剛)