ニッケイ新聞 2008年11月28日付け
ブラジル日本文化福祉協会(上原幸啓会長)の屋台骨を揺るがせてきたINSS問題が大きな展開を見せている。今月十日付け官報に掲載された大統領暫定令四百四十六号三十九項によれば、「国家社会保障審議会(CNAS)の福祉団体更新申請却下を受け、不服申し立てしている団体の請求は認められたとみなす」とあり、文協はこれに該当する。しかし、ガリヴァルジ・アルヴェス上院議長は審議を拒否して、十九日に同令の再検討を要求して差し戻した。文協法務委員会の大原毅委員長は、「朗報とはいえず、楽観視できない状況だが、十二月中旬までには、申請手続きを行う」と話している。
INSS問題とは、文協が一九六七年に取得した免税団体認定が九四年に無効とされ、追徴金を含む未納金約六百万レアルをINSS(国家社会保険院)から請求され、係争状態が続いていたことを指す。
〇五年九月に、サンパウロ市社会福祉審議会(COMAS)に福祉団体の認可を受け、文協は同十二月に社会福祉委員会を設立、福祉事業の強化を図っている。
〇六年五月にCNASに九四~九六年分の慈善団体登録が認められたが、INSSの異議申し立てを受け、文協はコンサルタント会社を通して対応。同年十月には、定款・名称の変更も行った。
この問題に詳しい文協法務副委員長の原田清弁護士は、議会内での政治的な動きも指摘。申請自体は複雑なものではないとしながらも、「現在は大統領令が有効なので、早急に申請作業をすれば未納金の支払い義務もなくなり、福祉団体として再登録されるだろう」と話している。
しかし、税金逃れの隠れ蓑として存在する名ばかりの福祉団体も多いことから、審査条項も複雑となっており、「解決したというわけではない」と話している。
同暫定令は下院では承認されたが、上院で差し戻されたことにより、今後の進展は不透明になっている。政治的な駆け引きなども行われるとみられ、承認を楽観視することはまだできない。さらに承認されたとしても、認可されるには審査が必要と見られている。