ニッケイ新聞 2008年12月2日付け
十一月三十日、ドーハで行われている国連の資金調達に関する会議で、来年の世界経済成長に関する三つのシナリオが公表され、ブラジルの場合、経済成長率は最悪なら〇・五%と発表したこを一日付けフォーリャ紙が報じた。国際経済は日々、悪化の様相を呈している。米国で金融危機が発生し先進国市場を襲ったとき、国際通貨基金(IMF)や世銀は早期回復と楽観視。しかし、国際金融の資金引き上げが予想外に早く、金融救済法承認が手間取り番狂わせとなったことを認めた。
最悪のシナリオの場合、ブラジルは〇・五%のみで、世界の成長率も〇・四%と予想する。ただし、平均ならブラジルは二・九%、最も楽観した場合で同三%となる。
この報告書を書いたロブ・ボス氏は「カーン専務理事らIMF幹部は常に、危機を小さく見せる発言に終始してきた。経済スタッフは金融機関の出身が多く、楽観的に見る習性がある。経済予測もその範囲を出ない」と警告した。「金融危機は最悪のシナリオに徐々に近づいている」。
欠陥をはらんだ米金融システムは、さらなる混乱を生み出す可能性がある。米国では〇七年九月のサブプライム問題時からこの十月までに銀行十六行が破綻し、百行がFRB(米準備制度理事会)の救済待ちになった。
このような中、早急に新戦略を打ち出す必要があるとジェットゥリオ・ヴァルガス財団のナカノ・ヨシアキ教授が同紙十一月三十日付けに次のような論説を寄せた。
ブラジルの産業は九〇年以来、外資依存の傾向が強くなった。政府も財政黒字に努力したが、公共債務を増大させ基本金利の引き上げと増税を余儀なくした。そのため企業の投資意欲を殺いだ。
〇七年中頃まで国際的な金余り現象が生じ、国内市場の過熱消費と政府経費の垂れ流しが起きた。そこへ金融混乱で流通量の枯渇だ。基本金利引上げで危機を克服しようとしたが、金集めに別の方法を考える必要がある。国内の貯蓄奨励だ。
現行政策では行き詰まる。金融経済からの収益は当てにならない。外資導入による経済発展は、殆ど不可能だ。〇八年はこれまでの経済政策モデルが終焉した年だ。緊縮財政と貯蓄奨励を打ち出せば、増税や財政黒字に対する政治的不満も一機に噴出するが、その中でいかに公共工事費を捻出していくかが、政府の課題といえる。