ニッケイ新聞 2008年12月12日付け
中央銀行の通貨委員会(Copom)は十日、現行の政策金利(Selic)年利一三・七五%を二カ月目も引き続き据え置くことを決定と十一日付けフォーリャ紙が報じた。ルーラ大統領から金利の引き下げ要求があったに関わらず、Copomは検討をしては見たもののマクロ経済の不確定要因と潜在インフレが大きいとして、満場一致で据え置きを決めた。
大統領や財界、労組などから政策金利の引き下げ圧力があったが、中銀は国際的な経済混乱が必ずインフレをもたらすとして抵抗した。しかし、来月から引き下げる可能性はあると、含みを残して閉会した。
先進諸国の経済が緊迫していることで、今回の通貨委員会は議論が白熱した。国際経済が金利引き下げで景気浮揚に努める中、ブラジルだけが逆コースを辿るからだ。
工商労連盟は中銀の通貨政策を「角を矯めて牛を殺す」と非難。インフレ回避の余り、経済成長を犠牲にする。「経済成長は、労働者にとって職場であり収入であり家族の生活だ」と主張。中銀の通貨政策は、ダイナミズムを欠くと抗議した。
先進各国が金融危機で疲弊した経済の活力源を重視するとき、ブラジルは高金利で経済を疲弊させ、物価の安定を図るというのだ。
仮に〇・二五%引き下げても銀行融資コストへのインパクトは僅少。市場金利は現在、平均で年四〇%を超えている。効果的な金利引き下げを行えば、経営者は設備投資に励み、消費も回復、GDP(国内総生産)を挽回するという意見もある。
大統領は先週、ブラジルの金利水準が高いことで不満を表明した。金融市場でも経済の冷え込みと工業生産の低下を前に、通貨政策の緩和を求める声がある。
金融市場では〇九年のGDPは、最低二%を保って欲しいと願っている。政府の四%から見れば、控えめだ。インフレの観点から見ると、金利引き下げは恐れる要因がない。十一月のIPCA(物価指数)は〇・三六%で、十月の〇・四五%から下がっている。
それでも中銀は物価を心配している。理由は、全てが不確定要素に包まれた国際的危機の中、ブラジル経済を盛りたてる要因がなく、インフレだけが潜んでいるという。
過去三十日間にドル通貨は一〇%以上高騰し、輸入食品を確実に押し上げ、インフレ・リスクとなっている。アナリストらは〇九年、インフレは目標の四・五%を超え五・二%をも超えると見ている。