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広島でもデカセギ失業の危機=自動車関連の不況が直撃=派遣打ち切り数百人規模に=子弟教育にも影響=「帰国する金もない」

ニッケイ新聞 2008年12月16日付け

 【中国新聞】マツダ協力企業など自動車関連工場が集まる広島県海田町と広島市安芸区で、日系人と家族らブラジル、ペルー出身者が大量失業の危機に直面している。派遣労働者が多く、マツダ減産などの影響による契約打ち切りが十一月ごろから本格化。年明けまでに数百人に達する見通しで、「このままでは半数以上が職を失う」と悲鳴が上がっている。
 ある自動車関連工場は、南米出身の派遣社員を一月初めに約百五十人減らす。十月以降は残業がなくなり、近くの別の工場でも、数人から二、三十人の人員整理が続いていた。「ついに来たか」。動揺が広がった。
 十四年前に来日した海田町のブラジル人男性(31)と妻(30)は同時に職を失う。次の仕事はまだ見つかりそうにない。日本生まれの小学生の長男(10)と保育所に通う長女(6)がいる。「高校を卒業させ、将来は家を建てたいと思っていたのに」。インターネット接続を解約し、子どもの英語、ピアノの習い事をやめさせた。ローンが残る車も処分する。
 保育料や住民税は、残業や休日出勤で現在の二倍近い収入があった昨年が基準だ。払う余裕はなく保育所は退所させる。「こんな不況は初めて。子どもをどう養えばいいのか」
 昨年末のデータでは海田町と安芸区のブラジル人は九百九十九人、ペルー人は二百三十二人。一九九〇年から日系三世までに就労制限のない定住資格が認められ、製造業の人手不足を補った。バブル崩壊後は雇用減。この数年は自動車産業の好調などで仕事量は拡大し、文字通り雇用の調整弁となってきた。
 約十人を削減する安芸区の工場経営者は「十月末以降は売り上げが昨年の二、三割減。正社員の雇用も危ない」と説明する。世界的な景気減速は、かつてない規模の人員削減の波となった。
 六月に長女(9)を連れてブラジルから来た女性(28)も、今月いっぱいで夫(26)とともに職を失う。借金で渡航費を確保し、来日した。「帰国するお金もない」。ペルーから六年前に来日し、今月十五日に失業する男性(36)も小学生の子ども二人を抱え、「母国にも仕事はない」と悩む。
 海田町で南米出身者向けの人材派遣会社を営む原口春樹さん(65)のもとには連日、愛知県など県外を含めて問い合わせが続く。「失業はさらに増え、住居を失う人も出るだろう。みんな、日本人と同じように税金を払ってきた。行政は支援策を考えてほしい」
 同町には週一回、南米からの輸入食品を移動販売するトラックが訪れる。最近は、売り上げはめっきり減った。地域に築き上げたコミュニティーは大きく揺らいでいる。