ニッケイ新聞 2008年12月17日付け
大手企業経営者が十五日、労組と政府に対し、経済が混乱する間、大規模な人員整理を避けるため、労働法の柔軟な適用を申し入れたと十六日付けエスタード紙が報じた。ヴァーレのロジェル・アギネリ社長とCNI(全国工業連盟)のアルマンド・モンテイロ会長は十一日、ルーラ大統領に直談判で「労働時間の短縮と減給が、労働者にとって失業より救いである」と訴えた。労組は、ヴァーレもCSN製鉄もピンチを切り抜けるだけの資本力を有し、解雇は不要だとしている。
労組のあり方が、今問われている。労組はこれまで労働条件の改善交渉を行ったが、労働者の失業回避交渉をした経験がない。労働者の生死を賭けた、配水の陣を敷いた事態が起きつつある。
企業が労働法の融通性で、政府に圧力をかけ始めた。政府も労組と危機突破での「労組のあり方」について対話を始めた。大統領は企業と労組、財務省、法務省、社会保障院、労働省、関係閣僚を呼び、緊急会議を召集することになった。
直面する国際的ピンチに企業が対処する方策を立ち上げ、労使双方に納得させる。操短や集団休暇に代わる長期対策を立案。これまで金科玉条とした均衡財政のマクロ政策中止、労働法が要求する義務や負担の見直し、生き残るために、抜本的な政策再検討を行う。
連邦令は、労組の理解が得られれば、減給も労働時間短縮も認めている。フォルクスワーゲンは一九九八年、同令の適用を受けた。連邦令に定めた非常時対処法だ。同令を早期適用していれば、大量解雇の事態には至らなかったという見方がある。政府の動きが、後手であったのだ。
CSN製鉄は、労組と非常時を前提に交渉を始めた。休暇中のサラリー前払い金は、固定給の七〇%から三三・三三%へ。四交代制を三交代制へ。これは平時交渉ではないとしている。
倒産を避けて労使双方が生き残るための非常手段で、いやならクビという伏線がある。CSN製鉄の措置にならって、多くの他企業も右へ倣うと思われている。
労組も急激な変化に、面食らったようだ。金融危機の衝撃が特に大きい業種は、公的資金の注入を受けており、利益を減らせば労働条件を落とさず操業できると考えていた。企業は人員整理が目的で、金融危機は単なる口実に過ぎないと労組はいっている。