ニッケイ新聞 2008年12月19日付け
サルバドール郊外のコスタ・ド・サウイーペで開催された中南米カリブ首脳会議は十七日、域内三十三カ国による米国を除いた地域機構〃中南米カリブ連合〃を創設することを決めて閉幕と十八日付けエスタード紙が報じた。同首脳会議はブラジル主導で、殆ど全ての域内諸国を欧米抜き結集をさせた。またブラジル下院では、ベネズエラのメルコスル加盟を賛成二百六十五票、反対六十一表で承認し、チャベス大統領への手土産にした。
同首脳会議で、米国のネオリベラリズムが金融危機と国際的不況の元凶とされ、米政府はフックの砂袋のように叩かれた。同会議は中南米の左傾化と米国離れを、さらに深めたようだ。
フェリッペ・カウデロン・メキシコ大統領は、「これは中南米カリブ連合と呼べる。二〇一〇年には発足できるだろう」と語った。初回の中南米カリブ会議は一九九四年、クリントン前大統領の提唱で、カナダを含めキューバを除いて開催されていた。
ルーラ大統領は南米諸国首脳を後回しにして、中米の小国首脳へ大統領特別機を送迎に当てた。米国と特別関係にあるコロンビアとペルーは、同会議へ欠席の意向を表明してきた。
ワシントンにある中南米戦略研究所のハッキン所長が「ブラジルが、中南米全域を包含する米国抜き地域機構の創設指揮者であることは、疑う余地がない」と述べた。
「ブラジルの輸出先国としての中国浮上やロシア大統領のブラジルを始めとするラテン・アメリカ諸国訪問は、米国が中南米の舞台から主役を下されたことを意味する。米国は中南米の覇者ではなく、また二度と覇者に返り咲くこともない」とホプキンス大学のロエット教授が語った。
下院が同首脳会議への出し物に、ベネズエラのメルコスル加盟を急遽承認し、タイミングを合わせたようだ。PSDB(民主社会党)だけが、チャベス大統領を非民主的な専制主義者と呼んだ。同案は即時、審議のため上院へ回された。
大統領は同首脳会議の開催中に、上下両院で同案を可決するよう連立与党へ号令をかけた。同案は〇七年二月、上程されたもの。チャベス大統領が、ブラジル議会を「米国のおうむ」と皮肉り、これまで棚ざらしにされた。
政府の考え方は、政治手法の差よりも通商関係を優先すべきだとする方に傾いている。思想の違いは、多国間外交では無意味だとする意見に変わりつつあるようだ。