ニッケイ新聞 2008年12月25日付け
ルーラ大統領は二十三日、仏政府の軍事支援に関する合意文書に調印し「軍事力は大国の必須条件であり、ブラジルはこれから世界で一目置かれる国であることを目指す」と宣言したことを二十四日付けエスタード紙が報じた。「軍備はアマゾン熱帯雨林や八千キロメートルにわたる沿岸大陸棚とその下に眠る海底油田警備のためであって、攻撃の意図は毛頭ない。天がブラジルに課した使命を遂げるための軍備で、仏政府の思いやりでもある」とした。
ルーラ大統領は国際政治での重責を帯び「ノーというべき時は、ハッキリとノーといえる力と勇気を持つブラジルになる」と覚悟の程を示した。伯仏合意文書は、ブラジル史に記される重要な出来事だと述べた。
調印が行われた合意文書には、戦略提携プランやアマゾンの天然資源、植物生態系、人材育成、仏領ギアナ金鉱、原潜建造、輸送ヘリの組み立てなどが盛られている。
さらにブラジル海軍の要請で潜水艦四隻は、原潜転用可能なスコルペーヌ級ディーゼル式で建造する。もう一隻は原子力推進方式で、核装備以外の技術指導を供与される。
いずれも仏国の軍事技術が、ブラジルへ供与される。ブラジル軍部と協力する関係企業は機密保持に協力し、南米諸国へ漏洩しないよう、仏大統領が念を押した。伯仏両国は軍事支援だけでなく、国際政治の改革でもチームを編成し、経済と通商について提携し合う。
伯仏両国は外交関係でも、G20を率先してリードする。両国は全て物事を国際レベルで考える。座礁したドーハ・ラウンド(多国間貿易交渉)も軌道に乗せる。
ドーハ・ラウンドの癌は自由貿易の本家なのに保護貿易にこだわる米国であり、保護色が強い民主党政権が誕生しても、オバマ新大統領で新たな変化が期待できるとアモリン外相は見ている。
伯仏両首脳は、金融危機の解決策が途上国支援にあることで意見が一致した。さらにブラジルがG8の一員になると、アラブ諸国との摩擦が改善されるとサルコジ仏大統領は見ている。
伯仏戦略提携でブラジルの外交政策は一変する。ブラジル産業界には南米諸国との取引を軽んじる雰囲気があるが、ルーラ大統領はメルコスルを「貧しいが親類のようなもので軽視できない」と諌めた。