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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年12月25日付け

 「信頼に値する人は誰もそれをせがんだりしない」というイギリスの教育者コリンズの言葉がある。会のお金を管理する会計理事が不正な使い込みをしたと見られる今回の長崎県人会の不祥事(今月二十四日付け七面)。「彼女に『信用してくれ』と言われたから」という中野恵市前会長の釈明が空しく響く▼県人会というのは、純粋な親睦団体であり、同じ古里を持つ人間同士の信頼関係がその基本だ。母県からの助成金や会員の会費、イベントの収益、つまり関係者の善意で成り立っているわけだが、その経営はあまりに杜撰すぎた▼何故、領収書がないまま二年間も会計処理ができたのか。会長印が必要な書類もあるはずだ。三カ月ごとの会計監査も行わないまま、今年二月の決算報告で残金一万六千レアルが発表された。実際はその十分の一だったのだが、この粉飾決算を監査役が承認、総会を通過した。当の会計理事の所業は言語道断、法的処置も止むを得まい。しかし会員の無関心さがその野放図を許したともいえないか▼この総会であった理事会選挙では、くだんの会計担当が監査役に。さらには、民法改正による定款変更が未登録で現在の執行部には法的な権限がなく、銀行口座の照会を行うのも解任されたはずの中野会長のサインが必要だった▼不健全な体制が生み出した今回の不始末は、母県やコロニアの信頼を失う結果となった。もはや人任せではなく、会員が一丸となって会の再建を目指すべきだ。信頼は言葉ではなく、その行いによってのみ得ることを肝に銘じるべきだろう。  (剛)